言葉言葉言葉:猫頭のノート 花冠

『於母影』と『海潮音』

さて。ここで、ヨーロッパの詩の翻訳の始まり、森鷗外等の翻訳詩『於母影』と上田敏の『海潮音』、明治初めの 「新体詩」と名付けられた時代の詩歌の、おさらいですが、・・ゆっくり味わいつつ続けます。

林望私訳 新海潮音―心に温めておいた四十三の英詩
2000年1月駿台曜曜社刊
すべて「恋」の詩で、「詩に番わせた」イラストは望さんの他娘さんの林春菜さんも
(43番目の英詩はYesterday・・・)

Yesterday


Yesterday, all my troubles seemed so far a-way
ついきのうまで、なにごともなかったのに
Now it looks as though they're here to stay
いまぼくのこころには、くるしみばかり
Oh I believe in yesterday
だから きのうまでの日々だけを信じていたい


Suddenly I'm not half the man I used to be
There's shadow hanging over me
いまぼくをつつみこむ くらいかげり
Oh yesterday came suddenly
ふいに きのうというわかれのときにうたれて


Why she had to go I don't know,she would't say
なぜ、どうしてきみは きゅうにいなくなったの?
I said something wrong now I long for yesterday
ぼくがなにか いけないことをいったのか
ああ、もう一度きのうからやりなおせたら・・・


Yesterday,love was such an easy game to play
ついきのうまで、きがるな遊びだった、恋
Now I need a place to hide a-way
いまぼくはこの世から 消えちまいたい
Oh I believe in yesterday
だから きのうまでの日々だけを信じていたい

by John Lennnon(1940-1980)
Paul McCartney(1942-)

by林望(1949-)訳


タイトル『 新海潮音』で恋の歌ばかりですか・・・mmmm♪(笑)
近世の××じゃないのか、と道学者(?)には、怒られたかも?等々余計な心配をしつつ、(?) 中でよかったロセティの詩を別にこちらに引用します。
また、ビートルズですが、他の名曲ももう少し別にこちらで見たい・・・

さて、ようよう、本題へ。


いままでにも時々に引用してきましたが、
 HPにて挙げたものは、まず、
2005/11/15 落葉:上田敏
(原作「秋の歌」ヴェルレーヌの最大傑作で、かつ『海潮音』の中での絶唱である、と紹介されている。
[※日本の詩歌〈第28〉訳詩集 (1969年) 解説(中央公論新社2001刊)]
2005/07/17 思い出さねばならないのか?(ミラボー橋)アポリネール、辺りでしょうか・・

その他、 2011年:「ゲーテの恋」という映画を見て、クリスマスにゲーテの詩を再読しました。
「君と共にゆかまし」ミニヨンの歌)は 、高橋健二訳(新潮文庫) と『於母影』の訳、竹山道雄の訳、堀内敬三の訳で。
なお、 「見出しぬ」」その他のゲーテの詩もいろいろと・・「月に寄す」、「影」(魔王)「小曲集」「千変万化の恋人」、「自分のもの」ワインでメタボなゲーテ「自然に関する断片」「人間性の限界」「詩と真実」



於母影 (1963年) (近代文芸復刻叢刊)
森鴎外・於母影研究 (1985年) (国文学論叢 新集〈7〉)

WEB検索より
■ミニヨンの歌  ゲーテ(新声社/森鴎外訳)
http://www.midnightpress.co.jp/poem/2009/01/post_76.html
■フランスの作曲家アンブロワーズ・トマの歌劇「ミニョン」
http://ameblo.jp/jaimeen/entry-11178671896.html

日本の詩壇に働き掛けて、新しい詩歌を興そうという意図
(by河盛好蔵※「日本の詩歌」28『訳詩集」の解説(中央公論新社刊))
を持っていたというこの二つの翻訳詩集について、
この中央公論社のアンソロジーにとり挙げられている詩を見てみましょう・・
(手元のものは2001年のオンデマンド版)


『於母影』(1889)明治22年8月 新声社刊


バイロン「いねよかし」(『チャイルド・ハロルドの巡歴』第1章2節目)落合直文訳とされる
ゲーテ「ミニヨンの歌」小金井喜美子訳とされる
(追加「ツウレの王」『ファウスト』)
ハイネ「あまをとめ」森鷗外訳とされる
ゲーロック「花薔薇」
レナウ「あしの曲」
シェイクスピア「オフェリヤの歌
の6と追加1でした

『海潮音』(1905)明治38年刊


57編29人の詩(フランス詩人本邦初訳)


日本の詩歌〈第28〉訳詩集 (1969年)に取り上げられているのは、先ず、

ガブリエレ・ダヌンチオの「燕の歌」「声曲」の2つの詩・・(因みに『海潮音』自体は初めにこの二つの詩で始まり、最後もこの詩人の別の2つの詩で終わっている)のであるが
全体は
ルコント・ドゥ・リイル(3)「真昼」
ホセ・マリア・デ・エレディヤ(3)「床」
シャルル・ボドレエル「信天翁」「人と海」「梟」
ポ-ル・ヴェルレエヌ「よくみるゆめ」「落葉
ウィルヘルム・アレント「わすれなぐさ」
カアル・ブッセ「山のあなた
オイゲン・クロアサン「秋」
テオドル・ストルム「水無月」
ハインリッヒ・ハイネ「花のをとめ」
ロバート・ブラウニング(5)「出現」「春の朝
ウィリアム・シェイクスピア「花くらべ」
ダンテ・ゲブリエル・ロセッティ「小曲」「春の貢」
ダンテ・アリギエリ「心も空に」
エミイル・ヴェルハアレン(6)「鷺の歌」「水かひば」
アンリ・ドゥ・レニエ(3)
ジョルジュ・ローデンバッハ「黄昏」
アルベエル・サマン「伴奏」
ステファヌ・マラルメ「嗟嘆」
テオドル・オオバネル(3)「故国」「海のあなたの」
拾遺
インド古詩
サッフォ「夕づつの清光を歌ひて」「忘れるにあらねども」 アルフレッド・ドゥ・ミュッセ「春夜」
以上26と拾遺いくつか

海潮音 (kindleで無料で読めます)

 

有名な訳詩

夜のパリ:プレヴェール(大岡信訳)
落葉:ヴェルレーヌ(上田敏訳)
ミニヨンの歌:ゲーテ(小金井喜美子訳)
ミラボー橋:アポリネール(窪田般彌訳)
耳:コクトー(堀口大学訳)
風:ロセッティ(西条八十訳)
春の朝:ブラウニング(上田敏訳)
墓碑銘:リルケ(神品芳夫訳)
山のあなた:カール・ブッセ(上田敏訳)

ロバート・ブラウニングの「春の朝」は私にも暗誦できる詩であった。

英米
ダンテ・ガブリエル・ロセッティテニスン
歌詞  ビートルズサイモン&ガーファンクル

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