「汝自身を知れ」(グノーティ・セアウトン)


女人像@pompeii photo by LIFE





"Goodbye, Mr. Chips" by James Hilton


字幕:己を知れ(グノテ・セイヨートン)→「汝自身を知れ」(グノーティ・セアウトン)

ジェイムズ・ヒルトン(1900-1954)
チップス先生さようなら」, 1934年 (映画原作)



汝自身を知れ



単に ソクラテスの言葉のように思っていましたが、
汝 自身を知れとは、ギリシャのアポロ(ン)神殿の入口の門の上に、金の文字で(!?)そう刻まれていた、という。

どういう意味であったのだろうか。

リンネ(Linne, Carl von, 1707-78スウェーデン 分類学の父)「自然の体系」(Systema Naturae1735オランダで出版)の冒頭では、 →「人間が全能の神の下位に従属することをまぎれのない事実として受け入れる」という意味であったようだ。(「 神の栄光のために」)
ちなみに来年2007年は カール・フォン・リンネ生誕300年という。

もとは七賢者の一人ターレスの格言で、 自分の分限をわきまえよという意味であったという。。
私としてはそういう、自分の背丈を知れ、身の程を弁えよ、というような自分の能力の限界に関する意味であったら、この言葉は好きでない。そんなことをいってもしょうがないでしょう、と思う。夢見る気力と自由、青年の大志を否定する側面があり、束縛にもなるから。
ソクラテスの「汝自身を知れ」との意味はこれとは違っていると思う。 文字通り自分を知ること、「哲学」(フィロソフィア)すること、自分自身の探求、純粋に、知の問題であったろう。

チップス先生にとってはどうだったのだろうか。

コチコチの堅物先生が、奥さんミュージカル女優の影響で…変わる…

原作ではキャサリンと山中で出逢いますが、
私の観た映画ではポンペイで (二度目に)出会います


チップス先生が、変わった、というか、
それまでの自分を別の目で知って、捨てられないものを知った・・・
(なによりも教師でありたいということを知った)・・・・

ちなみに  
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松浦明宏さんの「古代ギリシア哲学と現代倫理学のページ 」の
次の箇所は面白かった。
http://matsuura05.exblog.jp/d2004-02-10
「グノーティ・セアウトン」という言葉は、「度を越すなかれ」
という意味で使われ、現在のギリシアでは、酒場の店の入り口付近に張ってあるそうです。 正体を失うまで飲むなよ、ということですね。


それは、日本の 円柱の神殿が、パチンコ屋に多いような事情(娯楽の「殿堂」)を感じますが(∂。∂; …


WEB検索
アルマジロと読むタイムマガジン 第192号
発行責任者 有馬次郎サン、というのも面白い。
http://homepage2.nifty.com/Armadillo/

ERKENNE DICH SELBST!(ドイツ語)
Know thyself.(英語 )

ギリシャ語のグノーティもの cognition,ignorance, diagnosis などの gno=to know と語源的に繋がっている
それは忠告ではなくて「ごきげんよう」に代わるべき、神アポロンの挨拶なのだと 田中美知太郎著「ギリシア人の智慧;古典的世界から;ギリシア研究とヒューマニズム」で
説明されているそうです。


学芸の神 アポロンapollon

最高神ゼウスの子
デルフィは、アポロンの聖域
アポロンは、太陽と美の神、美術や音楽、詩歌の神でもある。


アポロンの神殿


ミケーネが滅ぶ紀元前1100年頃、アポロンがこの地に神殿を建て、
巫女の身を借りて、神託(お授け)を始めた。

紀元前370年頃再建

チップス先生の奥さんは・・ミュージカル女優・・・いわば
テルプシコラTerpsichora(踊りの楽しみ」の意)

9柱のムーサたちのうち、「合唱」「舞踊」を司る

ムーサ 芸術神ミューズ (Muse)
カリオペ(カリオペイア) Kaliope(ia) 英雄叙事詩。持ち物は書板と鉄筆。
クレイオ(クリオ) Kl(e)io 歴史。持ち物は巻物。
エウテルペ Euterpe 抒情詩。持ち物は笛。
タレイア Thaleia 喜劇。持ち物は仮面(喜劇)・蔦の冠・羊飼いの杖。
メルポメネ Melpomene 悲劇・挽歌。持ち物は仮面(悲劇)・葡萄の冠・靴。
テルプシコラ Tersichora 合唱・舞踊。持ち物は竪琴。
エラト Erato 独唱歌。持ち物は竪琴。
ポリュヒュムニア(ポリュムニア) Ply(hy)mnia 讃歌・物語。
ウラニア Urania 天文。持ち物は杖。

なるほど…




リンネとその使徒たち―探検博物学の夜明け
西村 三郎著朝日選書(1997刊)

チップス先生さようなら [Goodbye,Mr. Chips]
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映画データベース
1939年【米】ロバート・ドーナット アカデミー主演賞
1969年【米】ピーター・オトゥールゴールデン・グローブ男優賞
http://jtnews.pobox.ne.jp/movie/database/treview/re5037.html



  from2000/10/13 edited byM
発行日(更新日)LastModified: 2006年 12月6日(土)

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