「この天と地の間にはな、 ホレーシオ

哲学など思いもよらぬことがあるのだ」

HAMLET 1幕5場 河合祥一郎訳

SHAKESPEARE:Hamlet (ハムレット)
テツガク??人知??
There are more things in heaven and earth, Horatio,
Than are dreamt of in your philosophy.


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「言葉 言葉 言葉 」・・・ ハムレットの台詞です

ハムレットが 本を読んでいるとき、
「何」を読んでいるの?
・・・・・と聞かれて答えた台詞は、

「言葉 言葉 言葉」

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言葉 言葉 言葉
「 何」を読んでいるの?ってきかれたら、
当然、本の「題名」とか、 書いた人の「名前」とかあるいは「18世紀の詩だ」とか「推理小説だ」とか、 言うのがふつう。
それを、「言葉 言葉 言葉」と答える…
「 ズレたヤツ」の、「別の」台詞、あるいは 「ズラしたセリフ」だ。

思うに、「言葉、言葉、言葉」には、
言葉の空しさ、というものが背後についてまわる。
あるいは 「言いおおせて何かある?」という 謙虚な自省があり、
しかし、また、それとともに
「君の美の夏は終わっても
この詩によって君の美は永遠に生きるのだ」 (ソネット)・・・・とも、
同時に誇る・・・・
言葉 言葉 言葉・・・・

強くて弱い。
無価値で価値がある。
この矛盾形容は人間そのもののようだ、といっても
結局、「何も言ったことにならない」が。
言葉 言葉 言葉・・・・・

あるいは狂気を装い、あるいは感情をおしこめ、
人を誑かし、煙に巻く武器になり、
さまざまな遊びの種ともなる、
言葉 言葉 言葉・・・・・

テツガクの言葉であり、シュウジガクの綾であり、思考の綾であり、
戯れの言葉であり、世迷いごと、弔いの言葉であり、罵倒の言葉であり、
扇動のリズムであり、はきだされる呪詛であり、巫女の託宣であり、
ガクジュツの用語であり、捏造された観念であり、
宣告、遺言、墓碑銘、厳粛な遊び、「馬鹿を言え」で、
引用句であり、言い古されてなお新しいトポスであり、贈る花束であり、
概念の発見・発明、
アイの囁き、秘密の私語、ただのおしゃべり、孤独の詩語、物語…

言葉 言葉 言葉・・・・・
byM 猫頭 (2002/05/05)

小田島雄志さんの訳は

ハムレット 言葉、言葉、言葉。
ボローニア いえ、その内容で?
ハムレット ないよう?おれにはあるように思えるが。


HAMLET の該当の台詞の箇所

HAMLET ACT II SCENE II A room in the castle.


LORD POLONIUS
What do you read, my lord?

HAMLET
Words, words, words.

LORD POLONIUS
What is the matter, my lord?

HAMLET
Between who?

LORD POLONIUS
I mean, the matter that you read, my lord.

HAMLET
Slanders, sir: for the satirical rogue says here
that old men have grey beards, that their faces are
wrinkled, their eyes purging thick amber and
plum-tree gum and that they have a plentiful lack of
wit, together with most weak hams: all which, sir,
though I most powerfully and potently believe, yet
I hold it not honesty to have it thus set down, for
yourself, sir, should be old as I am, if like a crab
you could go backward.


ここで、かの小林秀雄のセリフを。彼は評論家というより「自前の」思考家であった。

むなしいという言葉は、
私の作った言葉ではありません。
使い切れない、空気のようにどこにでもある言葉です。

(「おふぃりあ遺文」より脚色)

「崇高を○○して 劣悪を○○しない、いかなる言葉があるの か?」



ここにいれる ○○というのは対語になっているはずなのだが、
今、どうも「うまく思い出せない。」
崇高を「志向」して
劣悪を「指弾」みたいな??いや、あとの単語は「シソウ」だとわかっていますが。


さて、「詩」は自分の内部の言葉であり、劇的独白もまた自分のものであるが、
日常においては、言葉とは他者との間にあるものだ。
「自分が発した言葉は伝わらないと思うべきなのだ」と コミュニケーションの専門家は言う。
「自分の考えたとおりには言葉は伝わらないものだという絶望に立ってから、
受け手にどう理解されるか、その化学反応を楽しむべきだ。」
自分の発した言葉がたいていそのままの意図で伝わらないのは、
「言葉というものは、同じ言葉を使っていても一人一人意味が違う。
ぞれぞれの経験が言葉に反映されていくわけです。」
(平田オリザ大阪大学コミュニケーション・デザインセンター教授の言葉)

不可解な道具…
もう少し遡っておきます…

「言葉 言葉 言葉」に関わる言葉
まずは ギリシア由来の言葉を

ロゴス logos

言葉,議論,言表,計算,比例,尺度,理法,理由,根拠など,複雑多様な意味をもったギリシア語。この語の動詞に当たる語は legein で〈話す〉〈語る〉を意味し,これに対応するラテン語の legere,ドイツ語の lesen はともに〈読む〉を意味するが,この三つの動詞に共通の基本的意味は〈集める〉である。もし集めることが乱雑な集積を意味せず,秩序ある取りまとめ,すなわち統一を意味するとすれば,そういう意味にしたがってロゴスという語を使用した最初の哲学者はヘラクレイトスである。彼にあってはロゴスとは,逆方向に働く二つの力を統一して一本の琴の弦にする理法であり,あるいは昼と夜とを一つに結合する理法のことであった。要するに相対立するものを結合し,万物を統一する理法がロゴスであった。そのロゴスを彼はときに〈神的法〉と呼んだり (断片 114), 〈神〉に見立てたりした (断片 67)。ストア学派の哲学はこのロゴス概念を継承し発展させた。同学派の祖キプロスのゼノンはいう, 〈共通なる普遍の法,それこそまさに“正しきロゴス orthos logos ”なのであるが,それはあまねく万物にゆきわたるもの,すなわち存在するものいっさいの秩序の主なるゼウスと同一なるものである〉。なお,周知のように新約聖書《ヨハネによる福音書》は〈初めに言 (ことば) (ロゴス) があった。言は神と共にあった。言は神であった〉で始まるが,ロゴスを神と同一視する態度は,すくなくとも形式的には,異教のストア学派の考えにつながるといえるかもしれない。
斎藤 忍随男(平凡社世界大百科事典)

ロゴス logos

WEB検索

理性」を意味するギリシャ語の「ロゴス(logos)」という言葉は、
非常に多義的な概念を持ち、
また、ギリシャ思想全体のキーワードともいうべき言葉ですが、通常は、
ロゴスは「言葉」そのものを意味するものとして使われます。
しかし、人間は「言葉」で考え、
「言葉」によって認識し、概念化し、
それを知識として獲得し、
その精神活動を「言葉」によって行って…(略)…
http://homepage.mac.com/berdyaev/rinrigaku/gaisetu/rinri10.html


以上は言葉と思考の区別はできないという小林秀雄の言語観とほぼ同じです。


パトス pathos

〈受動的状態〉〈感情〉〈情念〉などを表すギリシア語。英語ではペーソス。人間精神の能動的・習慣的・理性的契機としてのエートスやロゴスに対比されるとともに,実体に対する属性,さらには激情や苦悩,受苦,受難などの意でも用いられるようになった。
編集部(平凡社世界大百科事典)

ペーソス pathos

そこはかとなく身にせまる悲しい情感のこと。英語の音をそのまま移した語で,同様のユーモア (諧謔) との対比を意識して用いられることが多い。 〈哀愁〉〈哀感〉〈悲哀〉〈悲傷〉などとも訳される。語源はギリシア語のパトスpathos にあり,パトスとは〈何かされる〉という受身のあり方を本義として,ここから受難や被害の意を経て,激しい感情に襲われた心の情動や情念,ひいては苦悩を意味するまでになっている。同じギリシア語のエトス ethos,^thos (習慣,性格) やロゴス logos (言葉,理性) が人間精神の能動的・理性的で持続的な側面をあらわすのに対し,パトスは受動的・感情的で一時的な状態を語ろうとし,ここに激しさも盛り込まれるのである。だが日本語のペーソスには激しさが失せ,対象をみつめる目に諦念を感じさせる情調が強調されて,このような情調の感得される人生のできごととか,ことにその種の芸術作品の特質を語る用語となっている。
細井 雄介


情念 passion

心理学上の術語としては,感情一般のなかに属し,狭義の〈感情〉や〈情動 (エモーション) 〉と区別され,激情を意味する。つまり〈感情〉が強まりそれがはっきり身体に現れるほどになったとき〈情動〉と呼ばれ,またさらにいっそう激化して感情の自然の流れがせき止められ苦悩にさらされるようになるとき〈情念〉と呼ばれる。だが情念の問題は,それが同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉を意味することに示されるように,心理学を超えて,もっと広くてダイナミックな人間論的な広がりをもっている。そこで,情念がなぜ同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉などを意味しうるかであるが,それを明らかにするにはどうしても語源にさかのぼることが必要である。すなわち,情念=パッションは,語源的にはギリシア語のパトスpathos,ラテン語のパッシオ passio に由来し,元来,他から〈働きかけを受けること〉を意味している。そしてそのようなありようには,いろいろな側面がある。こうしてパトス=パッシオは,〈受動〉およびそれがもたらす事物の〈属性〉〈付与された性質〉から,被るものに害を与える〈激情〉や〈苦悩〉,さらには,大きな不幸やひどい苦痛をもたらす〈受苦〉や〈受難〉をも意味することになる。だから,ギリシア悲劇でのヒーロー (劇的行動者) の神への挑戦・敗北による〈受苦〉も,また,イエス・キリストの〈受難〉の生涯もパトス=パッシオ=パッションと呼ばれるのである。このような情念が人間理性に対立するものとしてとらえられるようになったのは,近代世界になってからである。そこではデカルトの《情念論》が示すように,情念は心身関係における〈身体の働きかけによる心の盲動〉,つまり身体に原因する心の乱れとして,否定的にとらえられたのだった。しかし現在では,情念,さらには〈パトスの知〉は心身合一の見地から,身体性をもった具体的な人間のありようを示すものとして見直されるようになってきている。
中村 雄二郎 Wikipedia


術語集―気になることば


エートス ethos

冷静さと情熱,理性と情念,合理と非合理,といった異質な要素の何らかの結合によって生み出された行為への一定の傾向性。エートスを,人間と社会の相互規定性をとらえる戦略概念として最初に用いたのはアリストテレスであり,社会認識の基軸として再びとらえたのがM.ウェーバーである。ウェーバーによれば,この行為性向は次の三つの性質をあわせもつ。 (1) ギリシア語の〈習慣 (エトス) 〉に名称が由来していることからうかがえるように,エートスは,それにふさわしい行為を実践するなかで体得される〈習慣によって形作られた〉行為性向である。 〈社会化〉によって人々に共有されるようになった行為パターンといってもよい。しかしある行為を機械的にいくら反覆してもエートスを作り出すことはできない (模倣・流行・しきたりへの盲従の場合)。 (2) その行為性向は意識的に選択される必要がある。 〈主体的選択に基づく〉行為性向がエートスである。 (3) 行為を選択する基準は何か。それは〈正しさ〉である。選択基準は,行為に外在する (行為の結果) か,内在する (行為に固有の価値) かのいずれかであるが, 〈正しい〉行為とは,内在性の基準が選択され,目的達成の手段ではなしに行為それ自体が目的として行われるような行為のことである。行うことそれ自体が〈自己目的になった〉行為性向がエートスといえよう。外的な罰や報酬なしには存続しえない行為性向はエートスではない。エートスの窮極的支えは個人の内面にある。ウェーバーは価値合理 wertrational と目的合理 zweckrational という対比で,自己目的あるいは正しさの契機を強調し,社会学の伝統を形作った (近年の社会学では表出的行動 expressive behavior と用具的行動 instrumental behavior という対比がよく用いられる)。習慣の契機が強調されると,エートスは, 〈学習された行為の統合形態〉という人類学における〈文化パターン cultural pattern〉の概念に生まれ変わる。選択性あるいは主観性の契機が強調されると,エートスは倫理学における倫理・道徳概念へと転生する。
厚東 洋輔
様式 Meyer Schapiro (原著), Ernst Hans Gombrich (原著), 細井 雄介 (翻訳), 板倉 寿郎 (翻訳)中央公論美術出版 ; (1997/07)



以下はもう少し

言葉、言葉、言葉を補足して行きます


言葉 言葉 言葉


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