食べること

最古の料理とは


オリエントの食事詩―ンというとまずAshurbanipalの宮殿の「葡萄樹の下の饗宴」を思い浮かべるが・・
(※唐草図鑑、 ※http://avantdoublier.blogspot.jp/http://www.biblearchaeology.org/
飲み物はビールが筆頭で、ワインは遅れて食卓に現れたとある。
ギルガメシュ叙事詩で、「野生動物の乳を吸う習慣しかなかったエンキドゥに、人間のように食べることと飲むことを教える。それは二つの要素から成り立つ、固形物すなわちパンと液体すなわちビールである。」(p64)

様々な料理の作業:軍事遠征の野営地の場面(大英博物館蔵)
カルフのアッシュルナシパル2世の宮殿の浮き彫りより、とある口絵写真

上段左:料理の品の準備
上段右:薪または炭火に風を送って火をおこし、煮炊きをしている
下段左:子牛の屠殺と解体
下段右:パンを焼く場面
大英博物館 Erich Lessing/AKG paris.


『最古の料理』ジャン ボテロ (著)
松島 英子 訳 政大学出版局 (2003/1)刊(りぶらりあ選書)

Jean Bott´ero , 1914~ 
「アッシリア学の第一人者であるとともに料理愛好家でもある著者が、楔形文字で記された最古のレシピを解読して、そのテクニックから材料と道具におよぶ具体像に迫る。死すべき存在(人間)の食べ物と、不死を可能にする神の食べ物とを区別する独特の神話構造にも言及した本書は、料理を手がかりとしたメソポタミア文化論でもある。」(「BOOK」データベースより)

2012-10-28~~以下抜き書き~~
p66.「食べる」と「飲む」に相当する語彙は、いずれも自然には存在しない「作られた」要素を含んでいる。
前3000年ごろ現れた最初の表意文字では、「口」を表す図柄の中にパンを示す図柄が挿入されている。この原型は楔形文字が消滅するまでかわらなかった。(「飲む」は口の中に「水」)

料理・・火を通すこと


最近のイエール大学タブレット(書板YBC)の発見・・楔形文字のレシピ
およそ前1600年ごろに年代づけられる最古のレシピ
それまでの最古の料理手引書はプラトンの同時代人(紀元前5世紀末)ミテコス(=料理のフィディアス)のもの。 この著作は失われ、最も古いレシピ集はアピキウスの「料理」(紀元後間もないころの120のレシピ)であった。
それを2000年をさかのぼる発見である・・
p69 「動物を越える」最初の一歩は、火を制すること。
全ての食材には火を通す必要がある。過熱という料理上の操作によってもたらされる根底的な転換を通じて、食材は食物になる・
パンとビール
p76 宗教祭儀
宗教祭儀において焼き物がとりわけこのまれたのに対し、人間が食べるものとなるとほとんど関心がはらわれていない
焼き物でなく煮物(水分を利用した間接的加熱調理)

古代ローマ・アピキウスのレシピ※Wikipediaレシピ(recipe )
アピキウスApicius 『料理帖』 - Keio University

「生命」の食べ物(不死の神の食べ物)


p222 生きる糧が「その本質に見合った生をもたらす」
生と死は生食べ物自体の中に存在していた。

神の食べ物というのは、人間の食べる食材と違う・・という風にとらえるのが自然だが、これを読んで、焼いたものは神の食べ物で煮たもの(煮込み)が人間の食べ物・・に思えてきた。・・(~_~;)
・・
とにかく、味覚が洗練されていたこと、料理が手を込んでいたこと、美食が追求されていたこと(p118)・・
タマネギとニンニクとポロネギ・・香味野菜の使用は呪術効果ではなく、美食追求のためであることを強調したいと著者はいう。・・なるほど・・人間・・
神、人、獣・・・
楔形文字レシピの訳文の一部。「エラム風煮込み。これには肉が必要である。お前は水を用意する。そこに脂肪、ういきょう…」なんか... on Twitpic
表紙の絵は、新都カルフ(=ニムルド)を建設した事で知られるアッシュールナツィルパル2世(Ashurnasirpal II)在位883BC~859BCの宮殿の浮き彫り(この本ではアシュルナシバルという表記)Nimrud、イラク、北西部の宮殿。 Photo taken by debaird at the Oriental Institute Museum at the University of Chicago.シカゴ大学東洋研究所美術館

口絵写真より
魚の形をしたパン型
ルーブル美術館蔵 RMN-Frank Raux
このほか、ルーブル美術館所蔵のうずくまるライオンの菓子型(マリの王宮出土の調理器具、新シュメール時代、前200年ごろ)
同じく、ルーブル美術館蔵の厚手フライパン・玉杓子:鉄製、テッロー(ラガシュ)出土、前3000年紀の写真もあり。
その他、ビールのろ過装置

p38 菓子・・アッカド語の「メルス」・・語源: 粉に液体を加えて「かき混ぜる」

※ラガシュ (Lagash)Wikipedia

口絵写真より
野営地で食事をとる兵士たち
ニネヴェのアッシュルバニパル宮殿の浮き彫りより
大英博物館 Erich Lessing/AKG paris.

手づかみですね

口絵写真より
食事
ニネヴェのアッシュルバニパル宮殿の浮き彫りより
大英博物館 Erich Lessing/AKG paris.


/Cast of an Assyrian War Camp Relief
Cast of an Assyrian War Camp Relief
Wikimediaにあったのは、 表紙左四半分:料理の品の準備の部分

http://www.bible-history.com/古代アッシリアの彫刻
http://www.gutenberg.org/


子牛の屠殺図であるが・・・今、このほかに、「肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 」 を読んでいる
人間が食べるために神が動物を作ったという・・
家畜に対する態度が、ただちに思想形成の根本にかかわる(p111)・・・1966年の刊でデータが古いが中公文庫 (2007年)にも入り、ロングセラーの古典・・
「近代以前でも、ヨーロッパ人の穀物依存率が意外に低いのに驚かされる」
「高い肉食率からきた断絶論理が、人間と動物の区別にとどまらず、人間社会の階層意識を助長した」
「村落単位の社会意識も、パン食から出てくる社会意識も、穀物栽培の適地でないヨーロッパで、麦を粉にし、焼くなど、お互いに協力し、何とか穀物を口にできるように努力してきた結果である」 
「(異端)少しでもキリスト教に対する解釈の違うものは、お互いに、同格の人間でもなければ、同じ社会の成員でもなかった。断絶論地と結びついた社会意識は、恐るべき威力を発揮する。ヨーロッパの食生活パターンは、ここまで影響するのである。」(p148) 「伝統的な社会意識が、いわば両刃の剣として機能し続けている」
輸出不可のなものとして、食生活パターンと思想のつながり・・
私たちのイメージの中に漠然と存在するヨーロッパ思想は、ある程度輸出向きの近代の産物・・(p152)
「ヨーロッパの近代化とは、伝統思想を支えるヨーロッパの特有の諸条件のもつ比重が、大幅に低下したことである。」
「おせっかいな社会意識」 「民主主義はフィクション(自由で平等な人間)に立脚した一つの幻影である」。「近代思想の掲げる『自由と平等』の大義名分は、日本に入ると、思いがけない機能を演じた。日本での輸入された『平等』の実体化。日本全体が、その場限りのムード的多数意志に引きずられる。」「欧米諸国に妙な劣等感感をもつことを改めで日本らしい生き方はどういうものか、腰を据えて探ってみる必要がある。」 」

・・・

 西欧文化は「強烈な断絶論理」に基づいている
日常的に家畜を食する西欧人にとって、宗教的にも思想的にも、人と動物を断絶する根拠と理論が何よりも必要で、そうしなければ日々を共に暮らす動物たちを殺して食する肉食中心の西欧文化は生まれ得なかった

http://www.asahi.com/housing/column/TKY200803270265.html
竹山道夫「ヨーロッパの旅」より
あるとき大勢の会食で、血だらけの豚の頭が出たが、さすがにフォークを進めかねて、私はいった。 『どうもこういうものは残酷だなあ・・』 一人のお嬢さんが答えた。 『あら、だって、牛や豚は人間に食べられるために神様が作ってくださったのだわ』 幾人かのご婦人たちが、その豚の頭をナイフで切りフォークでつついていた。彼女たちはこういう点での心的抑制はまったくもっていず、私が手もとを躊躇するのをきゃっきゃと笑っていた。 『日本人はむかしから生物を憐れみました。小鳥ぐらいなら、頭からかじることはあるけれども』 こういうと、今度は一せいに怖れといかりの叫びがあがった。 『まあ、小鳥を!あんなにやさしい可愛らしいものを食べるなんて、何という残酷な国民なんでしよう』 私は弁解の言葉に窮した・・・」
http://www.10-stones.co.jp/fukudaserialize/monda23.html・・

Mesopotamia Enciclopedia

上に戻る