シェークスピアの劇的独白を愉しむ


 


この天と地の間にはな、ホレイシオ
HAMLET 1幕5場



HAMLET
Well said, old mole! canst work i' the earth so fast?
A worthy pioner! Once more remove, good friends.

HORATIO
O day and night, but this is wondrous strange!

HAMLET
And therefore as a stranger give it welcome.
There are more things in heaven and earth, Horatio,
Than are dreamt of in your philosophy.
But come;
Here, as before, never, so help you mercy,
How strange or odd soe'er I bear myself,
As I perchance hereafter shall think meet
To put an antic disposition on,
That you, at such times seeing me, never shall,
With arms encumber'd thus, or this headshake,
Or by pronouncing of some doubtful phrase,
As 'Well, well, we know,' or 'We could, an if we would,'
Or 'If we list to speak,' or 'There be, an if they might,'
Or such ambiguous giving out, to note
That you know aught of me: this not to do,
So grace and mercy at your most need help you, Swear.

Ghost
[Beneath] Swear.

HAMLET
Rest, rest, perturbed spirit!

They swear
Act 1, Scene 5 : Another part of the platform.


この箇所では笑ってしまう。
友人(臣下)に見たことを話してはならぬ、
剣にかけて誓え、というわけだが、3度誓わせる。
そのとき、
亡霊も地下から「誓え」というのだが、
ハムレットが走り回って、場所を変えて誓わせるのだ。

「よくまぁ、そんなに早く地面の下を掘ってゆけるな、
天晴れ見事な工夫ぶりだ!」

「コチラトオモエバマタアチラ」
神の偏在を示す気まり文句を
亡霊の神出鬼没さに適用してパロディ化しているというわけで、
悲劇のさなかの茶番(バーレスク)であり、シェークスピア得意の手法、と
野島秀勝さん。

それはともかく、
ここでモンダイは、
ハムレットとホレイシオは、ウィッティンバーグ大学、
マルティン・ルターMartin Luther(1483〜1546)
プロテスタントの大学の学生であるということ。
「中世以来の伝統的考えでは、幽霊もしくは亡霊は
煉獄から現世に戻ることを許され
生前なんらかの濃密な関係があった人に現れると信じられていた。」
しかし、
「プロテスタントは煉獄を認めない、天国か地獄しか信じない、
したがって
亡霊は天使か悪魔が死者の生前の姿を借りて出現したものと考えられた。」
「悪魔は天使や美女や親しい知人の姿を借りて現れ、
人を地獄へと誘惑する。」

ホレイシオは 「コレはいったいどういうことだ、とても信じがたい。」という。
ハムレットは、
「では信じがたいものとして受け入れろ、
この天と地の間にはな、ホレイシオ、
学問などの思いよらぬことがあるのだ

河合祥一郎訳

亡霊が「われこそは汝の父」といっても、
ハムレットは 亡霊が消えるとなお、懐疑がよみがえると、野島秀勝さんはいう。
「この時代を根底から揺り動かした新旧二様の
キリスト教信仰の葛藤は明らかだ。」と。

平成14年1月 岩波文庫〔ワイド版 平成15年8月〕補注

昨日、書き損ねましたが、
もうひとつ、地動説のコペルニクスNicolaus Copernicusが1473〜1543の人で、
ガリレオ(Galileo Galilei 1564〜1642) はシェークスピアの同時代人であった。

続きは明日

シェークスピアの肖像おまけ


額縁に入れるべきか?
2006年の日めくりCALENDARにするべきか?

もちろん後者です。
彼のピアスは金の丸だけでもなかったか?