シェークスピアの劇的独白を愉しむ




人は自分の思いに合わせて、言葉を補う
Gentleman
She speaks much of her father; says she hears
There's tricks i' the world; and hems, and beats her heart;
Spurns enviously at straws; speaks things in doubt,
That carry but half sense: her speech is nothing,
Yet the unshaped use of it doth move
The hearers to collection; they aim at it,
And botch the words up fit to their own thoughts;
Which, as her winks, and nods, and gestures
yield them,
Indeed would make one think there might be thought,
Though nothing sure, yet much unhappily.

HORATIO
'Twere good she were spoken with; for she may strew
第4幕第5場



Act 4, Scene 5 A room in the castle.


紳士(Q2)あるいは ホレーシオ(Folio)

しきりに父親のことを口にし、
よからぬ悪巧みがあるといい、咳払いをするかと思うと、
悲しげに胸を叩きます。
つまらぬことに腹を立て、不明瞭な、
半ば意味のない話をします。
そのとりとめもない言葉をつなぎ合わせて、意味をとれば
心を動かされます。
人は、その意味を推測し、自分の思いに合わせて、言葉を補うのです。

河合祥一郎訳




なんですか、これは。プンプン…
いえ、上の台詞についてではありません。
HAMLETとは何だ…
言葉言葉言葉、です。
それはおいて、
今日ようやく、ケネス・ブラナーのHAMLETのビデオを見終えました。
2巻組でちょうど昨日のところで、1巻目と2巻目の
インターミッション(休憩)が入りました。

とにかく、昨日のところが、フォーティンブラスの軍を見ながらの、
ハムレットの最後の(第7)独白であった…
ここまでが長かったのですね。
ポローニアスを殺してしまったところで
序破急の急のところにきた、と 書いていたのだだれでしたっけ?

今日ビデオの残りを見ると、
なんですか、これは。プンプン…
ん??拘束着を着せられたオフィーリアって何…(^_^;;
まぁ、それもまぁ、いいとして…

断じていかんのは、
フォーティンブラスを卑劣なうそつきにしている!
なんですか、これは。プンプン…
うそつきというか権謀術数の王というか
約束をたがえて、王宮に武力で入って来る設定だ。
この解釈はおかしい。
ハムレットがほめる男を、国を掠め取る男にしてしまうとは。

ハムレットがその男を見て名誉という話をしていたというのに、
油断させておいて帰り道で襲ってくるとは、
ありえない、汚いやり口だ。
戦争だから何でもありだとか、
あの男をアレクサンダー大王にでもなぞらえるのか?
ハムレットの物語では
戦争にも仁義があり、王同士の一騎打ちで
領土について決めた…
自殺を禁じるといっても、ローマの人間のように、
お供をして死ぬ、とホレーショーが言うように、
名誉を重んじる武人の、サムライの
そんな時代の話ではなかったのか…
なるほど、台詞はなにひとつたがえてはいない、しかし、
映像で勝手な解釈を付け加えている。
先王のハムレットの像をうち壊すという幕切れは、かって過ぎる。
又、有能な政治家としてのクローディアスをも
無策な王として、矮小化してしまうものだ。
フォーティンブラスは
ハムレットの遺言から王になるのだ。

シェークスピアがイギリス人だからといって、
帝国主義を描きたいのか?
これはないよ。プンプン。

この映画を見れば、ハムレットを読む必要がないなどと、
書いているブログなど、何を言っている!?
HAMLETを読む100人に100人のハムレットがいる、というのはよいが、
台詞以外の映像が、勝手な解釈を描き足しすぎている。
これは最後のところで却下すべき映画です。
(がっかり)

今日はこんなことを書くつもりではなかった。

「ナルニア国物語」でアヌランがピーターの初陣のとき
「剣の血をぬぐうことを忘れないようにしなさい」という、
草でもよい、服でもよい…血をぬぐえと。
なんということだ。

気を取り直して、
オフィーリアです。



OPHELIA
[Sings]
How should I your true love know
From another one?
By his cockle hat and staff,
And his sandal shoon.

QUEEN GERTRUDE
Alas, sweet lady, what imports this song?

OPHELIA
Say you? nay, pray you, mark.

Sings

He is dead and gone, lady,
He is dead and gone;
At his head a grass-green turf,
At his heels a stone.

QUEEN GERTRUDE
Nay, but, Ophelia,--

OPHELIA
Pray you, mark.

Sings

White his shroud as the mountain snow,--

Enter KING CLAUDIUS

QUEEN GERTRUDE
Alas, look here, my lord.

OPHELIA
[Sings]
Larded with sweet flowers
Which bewept to the grave did go
With true-love showers.

KING CLAUDIUS
How do you, pretty lady?

OPHELIA
Well, God 'ild you! They say the owl was a baker's
daughter. Lord, we know what we are, but know not
what we may be. God be at your table!

KING CLAUDIUS
Conceit upon her father.

OPHELIA
Pray you, let's have no words of this; but when they
ask you what it means, say you this:

Sings

To-morrow is Saint Valentine's day,
All in the morning betime,
And I a maid at your window,
To be your Valentine.
Then up he rose, and donn'd his clothes,
And dupp'd the chamber-door;
Let in the maid, that out a maid
Never departed more.

KING CLAUDIUS
Pretty Ophelia!

OPHELIA
Indeed, la, without an oath, I'll make an end on't:

Sings

By Gis and by Saint Charity,
Alack, and fie for shame!
Young men will do't, if they come to't;
By cock, they are to blame.
Quoth she, before you tumbled me,
You promised me to wed.
So would I ha' done, by yonder sun,
An thou hadst not come to my bed.

KING CLAUDIUS
How long hath she been thus?

OPHELIA
I hope all will be well. We must be patient: but I
cannot choose but weep, to think they should lay him
i' the cold ground. My brother shall know of it:
and so I thank you for your good counsel. Come, my
coach! Good night, ladies; good night, sweet ladies;
good night, good night.

Exit

しかし、歌って、歌って、退場です。

My brother shall know of it:
and so I thank you for your good counsel.
Come, my coach!

そんなコーチは、 余計なお世話だったと思うけれどね。




ケネス・ブラナーに関するおまけ

ケネス・ブラナーの自伝
…を買ってしまった。
エマ・トンプソンとのMUCH ADO ABOUT NOTHING 「から騒ぎ」(1993)
で、すごいと思ったし、
下のようにハムレット役としては、いいのにね
(映画には不満)
なんと28歳までの自伝だ。
私のはじまり―ケネス・ブラナー自伝
今は「ハリー・ポッター 秘密の部屋」(2002)の役が強烈?

映画 Hamlet  (1996年、イギリス)についての補足

監督/脚色
 ケネス・ブラナー
製作
 デヴィッド・バロン
キャスト
  ハムレット:ケネス・ブラナー
  オフィーリア:ケイト・ウィンスレット
  ポローニアス:リチャード・ブライアーズ
  ガートルード:ジュリー・クリスティ
  クローディアス:デレク・ジャコビ
  墓掘り男:ビリー・クリスタル
  マーセラス:ジャック・レモン
  オズリック:ロビン・ウィリアムズ
  プライアム王:ジョン・ギールグッド
  英国大使:リチャード・アッテンボロー
  レナルドー:ジェラール・ドパルデュー
  レアティーズ:マイケル・マロニー
  ホレーシオ:ニコラス・ファレル
  ローゼンクランツ:ティモシー・スポール
  フォーティンブラス:ルーファス・スーエル

配給:東宝東和 243分ハムレット【字幕版】

淀川長治さんによる感想
淀川長治の銀幕旅行THE SANKEI SHIMBUN
CINEMASCAPE: 淀川長治の新シネマトーク MAGAZINE HOUSE

「時代を19世紀にしてある」
…そこが問題だったのかも。