シェークスピアの劇的独白を愉しむ




行為には三つの段階がある。やる、する、行うってな

第5 幕第1場



First Clown
It must be 'se offendendo;' it cannot be else. For
here lies the point: if I drown myself wittingly,
it argues an act: and an act hath three branches: it
is, to act, to do, to perform: argal, she drowned
herself wittingly.

Second Clown
Nay, but hear you, goodman delver,--

First Clown
Give me leave. Here lies the water; good: here
stands the man; good; if the man go to this water,
and drown himself, it is, will he, nill he, he
goes,--mark you that; but if the water come to him
and drown him, he drowns not himself: argal, he
that is not guilty of his own death shortens not his own life.

Second Clown
But is this law?

First Clown
Ay, marry, is't; crowner's quest law.
The Tragedy of Hamlet, Prince of Denmark
Act 5, Scene 1 A churchyard.





もしおれが故意に溺れたとする。こいつは行為ってものだ。
行為には三通りの方法がある。
つまり、やる、やらかす、やりとげる、だ。
しかるが故にだ、この女は故意に溺れたってわけさ。

ちょっと待てよ。

まぁいいから聞けよ。
小田島雄志訳




要するにだ。わざと自分で溺れたら、
それはひとつの行為であり、
行為には三つの段階がある。
やる、する、行うってな。
しかるがゆえに、この人はわざと溺れたんだ。

いや、まぁききなよ、親父さん。

ちょい待ち。
河合祥一郎訳


いいか、こういうことだよ。
もしおれがだよ、自分で合点だと跳びこんでみな、
それは行為というものだ。
行為というものには三つの順序がある。
つまり、する、なす、おこなうーかるがゆえにだ、
この女は自分で合点のうえ跳びこんだということになる。

ちょっと待った。

おれの言うこと、おとなしく聴いていろよ。
福田恒存訳


墓堀の場です。
検死の役人の法律??


あはは(^o^;) 

この三つの言葉の意味は どうちがうのだ??


政治家の頭蓋骨…
   あの頭で神を出し抜く抜け目のなさを発揮したかもしれない
宮廷人の頭蓋骨…
   れっきとした閣下のくせにどこぞの閣下の馬がほしくなると、
   いい馬をお持ちですなんてほめまくったかも
弁護士の頭蓋骨…
   自慢の詭弁はどこに行った。言い逃れは?
王様の道化師ヨリック…
   際限なく冗談を言う、すばらしい想像力の持ち主
   この顔を笑い飛ばす冗談のひとつも出てこぬか。
   さぁ貴婦人のところに言って、何センチ化粧を塗りたくっても、
    結局はこうなるんですよって、そういって笑わせてこい。
アレクサンダー大王…
   気高い遺骸も、酒樽の栓なるかもしれない。
   埋められる、土に返る、土から粘土ができる、酒樽の栓を作る
河合祥一郎訳





ハムレットを象徴するのはこれです。
頭蓋骨。


もうひとつ、王冠もあるのでしょうが。
又、剣も。
しかし、まず、ハムレットが手に頭蓋骨を持つ、これが第一。





土に埋めろ。
その美しく汚(けが)れなき体より、
董の花よ、咲きいでよ。

なに、美しいオフィーリアが!

待て、土をかけるな。
今一度、この腕に抱きたい。
さあ、生きている者もろともに土をかけろ。
雲を貫くぺリオンの頂よりも高く、
青くそびえるオリンポスの峰も及ばぬほど、
山と盛り上げるがいい。

何者だ、そんなに大仰に嘆いて見せるのは。
その嘆き節で空を巡る星に魔法をかけ、
驚きのあまり止まらせようとでもいうのか。

This is I,Hamlet the Dane.
私だ、デンマーク王子ハムレットだ。

お前、オフィーリアのために何ができるのだ。
ここに泣き言を言いに来たのか。
一緒に生き埋めになるというなら、俺だってそうしてやる。
山がどうとか抜かすなら、俺たちの上に
頂が太陽の火に焼け焦がれるまで、山と土をかけるがいい。
雲より高い山など豆粒同然、
いや、お前が大口をたたくなら、俺だってわめいてやる。
河合祥一郎訳

第5 幕第1場



われを忘れてしまい、
レアティーズにはとても悪いことをしたと思っている。
何しろ俺の立場を鏡に映してみれば、
奴の立場も見えてくるからな。仲直りをしよう。
しかし、あんまり仰々しく嘆くものだから、
こちらも舞い上がってしまった。
河合祥一郎訳

第5 幕第2場


「メメントモリ」に関するおまけ


Memento Moriメメントモリとは、
「死を覚えよ」、「死を想え」という意味で、
ヨーロッパ中世末期にさかんに使われた
ラテン語の宗教語、挨拶語・合言葉

「死するということを刻め、

「汝は不死なる神ではなく、死すべき人間であることを自覚せよ)
ギリシア・ローマ名言集」(柳沼 重剛著、岩波文庫)

carpe diem, quam minimum credula postero カルペ・ディエム
「一日(の花)を摘め。」(ホラティウス)
いまを生きる
「現在を楽しめ。できるだけ少く未来に信頼せよ」