byM_猫頭's アドヴェント20121213

ライオンは「てつがく」が気に入っている。 かたつむりが、ライオンというのは獣の王で 哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。 きょうライオンは「てつがくてき」になろうと思った。 哲学というのは座り方から工夫した方がよいと思われるので、 尾を右にまるめて腹ばいに座り、 前肢(まえあし)を重ねてそろえた。 首をのばし、右斜め上をむいた。 尾のまるめ具合からして、その方がよい。 尾が右で顔が左をむいたら、でれりとしてしまう。 ライオンが顔をむけた先に、草原が続き木が一本はえていた。 ライオンは、その木の梢を見つめた。 梢の葉は風に吹かれてゆれた。 ライオンのたてがみも、ときどきゆれた。 (だれか来てくれるといいな。「なにしてるの?」と聞いたら 「てつがくしてるの」って答えるんだ) ライオンは、横目で、 だれか来るのを見張りながらじっとしていたがだれもこなかった。 日が暮れた。ライオンは肩がこってお腹がすいた。 (てつがくは肩がこるな。お腹がすくと、てつがくはだめだな) きょうは「てつがく」はおわりにして、 かたつむりのところへ行こうと思った。 「やあ、かたつむり。ぼくはきょう、てつがくだった」 「やあ、ライオン。それはよかった。で、どんなだった?」 「うん、こんなだった」 ライオンは、てつがくをやった時の様子をしてみせた。 さっきと同じように首をのばして右斜め上を見ると、 そこには夕焼けの空があった。 「ああ、なんていいのだろう。 ライオン、あんたの哲学は、とても美しくてとても立派」 「そう?・・・とても・・・何だって?もういちど云ってくれない?」 「うん、とても美しくて、とても立派」 「そう、ぼくのてつがくは、とても美しくてとても立派なの? ありがとうかたつむり」 ライオンは肩こりもお腹すきもわすれて、 じっとてつがくになっていた。  

工藤 直子「てつがくのライオン」1983年


工藤直子さんの詩を読みました。

 ホームページを作成し始めたころのはらうたのホームページが休止してがっかりしたものでしたが
やっぱり好きだな~
『てつがくのライオン』で日本児童文学者協会新人賞(Wikipedia)中一の国語の教科書に配当

  今日は12月の13日目・・


クリスマスまであと11日

2012年12月13日(木)

LastModified: 2012年

↑上に戻る
BACK(前頁に戻る)