2003/12/16
「氷」氷った焔
清岡 卓行さんは1922年生で、現在81歳になられたんですね・・・ 「20歳のエチュード」の、
海に入って自殺した原口統三の兄貴分だったと思うから
いつまでも若く思えるのですが・・
焔が凍るというのは・・逆説というか、
シェークスピアの有名な修辞法ですね。
それはこうです・・・

「ああ争う恋、ああ恋しての憎しみ、ああ無から生じた有、
ああ重い軽はずみ、真剣な戯れ、美しい姿の醜い取り乱し、
鉛の羽根、輝く煙、冷たい火、病める健康、
いつも覚めているほんものでない眠り」
(シェークスピア『ロミオとジュリエット』)

「理知的なジュリエットなんて、炊きたての冷飯、
痩せぎすの肥っちょ、見上げるような小男、
前途洋々の老人、抜群の不成績、一匹狼の大群、
何千何万という四十七士、傾国の醜女、
不親切な人情家みたいなものだ」(井上ひさし『青葉繁れる』)

「むしの好かないやつが親切で、
気の合った友だちが悪者だなんて、人をバカにしている。
おおかた、いなかだから、万事東京のさかにいくんだろう。
ぶっそうなところだ。
いまに火事が凍って、石が豆腐になるかもしれない」
(夏目漱石『坊っちゃん』)
清岡さんの 自伝的小説の「アカシヤの大連 」
(第62回 芥川賞)も思い出されますが
第一詩集の題は『氷った焔』でした(1959年)・・

最近は、詩集『一瞬』(思潮社)で
2002年現代詩花椿賞 (資生堂)をうけられたのですね。

あと・・「 猫町」
(萩原朔太郎/清岡卓行編 岩波文庫1995刊)・・

    人生は思ったほど悪くも 良くもない。 
    そんな感想をふと浮かばせる蓋然性(プロバビリテ)の魔。 
    ああ 遠い日に 原爆で倒れた友。また 
    二十才のとき 生を呪って自殺した友よ。 
(「行程」)
氷った焔

・・・・どこから世界を覗こうと
見るとはかすかに愛することであり・・・
きみの絶望が希望と手をつないで戻ってくることを
きみの記憶と地球の円周を決定的に選ぶことを
夜の眠りの前に君はまだ知らない




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