星の本を読む

星座、天文、天象

『星座神話の起源』

 

わかってきた星座神話の起源―エジプト・ナイルの星座
(2010年5月刊 誠文堂新光社)近藤 二郎 著
https://yab.yomiuri.co.jp/adv/


目次(「BOOK」データベースより)
序章 古代エジプト天文学の世界
第1章 古代エジプトの暦と時
第2章 古代エジプト人の宇宙観
第3章 古代エジプトの星座―北天の星座
第4章 古代エジプトの星座―南天の星座
第5章 デンデラ神殿の天体図―ヘレニズム時代の星空を表した天体図
第6章 ヘレニズム時代の科学と天文学

古代エジプト天文学

近藤二郎[コンドウジロウ]
1951年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。早稲田大学エジプト学研究所所長。(一社)日本オリエント学会会長。専攻はエジプト学、考古学。天文ファンとしても長年熱心に活動。専門のエジプト学、考古学の知識を活かし、天文学や星座の歴史的な研究をライフワークとして取り組む。
著書に『エジプトの考古学』(同成社)、『もののはじまり50話』(岩波ジュニア新書)など。

古代オリエント地域には、人類史上で最古の文明が発達したメソポタミアとエジプトが含まれる。古代科学や古代技術の全容についてはなお不明な点が多い。(p009)
紀元前2世紀のプトレマイオスの『天文学大全(アルマゲスト)Almagest』:48の星座と1922個の恒星目録。
プトレマイオス朝に建造されたデンデラ神殿の天体図には、古代メソポタミアの星座とともに古代エジプト固有の星座が描かれている。
しかし、 なぜか 「プトレマイオス四八星座」からは古代エジプト固有の星座は姿を消している。(p010)

古代エジプトの天文学の特徴
古代メソポタミアでは、天空上の異変に注意が向けられ、初期から皆既日食や皆既月食、掩蔽、彗星の出現、惑星の動きなどの観測記録が残されたが、古代エジプトでは、反対に「変化しないこと」に注目していた。
古代エジプト人は天空を36の「デカン」(10日ごとに変化していく星空を一つのグループとみなす)に分割して夜空を観測していた。
シリウスの出現記録から、一年を365日とする暦、さらに一日24時間制も作りだしたを考案したとされる。(p011)
古代エジプトの天文観測は、宇宙の深淵な秩序と法則性とを底から見出す単に実施した。
古代メソポタミアでは天空上で起こる変化、この世における悪い変化に対応しており、その手間に天に乗じた前兆現象には敏感に反応して、対処することが必要と考えられ、初期から天文観測と占星術とは切り離すことのできない関係にあった。(p012)
古代エジプトの星座の研究:
『エジプト天文学テキスト』(EgyptianAstronomicallTexts)1960年代の
オットー・ノイゲバウアー(wikipedia)とリチャード・パーカー

「時計の起源 日時計」:グノモン(投影棒)https://museum.seiko.co.jp/

Ancient Egyptian water-clocks
Wuppertaler Uhrenmuseum 02
Ausstellungsstück im Wuppertaler Uhrenmuseums
bei Juwelier Abeler in Wuppertal, Poststr. 11

太古のシンボル星文様 
星の文字

星
古代エジプトの墓室に描かれる星空

エジプトのヒエログリフでは、星をさす文字は、
ヒエログリフの「星」 海星(ヒトデ)
https://flora.karakusamon.com/hosi.html


古代中国 甲骨文

わかってきた星座神話の起源―古代メソポタミアの星座
2010/12/1 刊 近藤 二郎 (著)


目次(「BOOK」データベースより)
第1章 天文学発祥の地メソポタミア
第2章 黄道一二宮の星座
第3章 北天の星座
第4章 南天の星座・黄道一二宮以外の星座
第5章 古代メソポタミアの天体観測
第6章 古代メソポタミアから、ギリシア、アラビアへ

古代メソポタミア天文学


(p019)楔形で記され星(MUL)を意味する文字記号(左)
天を意味する”AN"(右)を三つ組み合わせて形作っている。


天を意味する”AN"は”*”を単純化して作られたといわれる。
図のように楔型でないANの表現もあり、
三つ描いて”MUL"(✳)にする表現をも存在した。
※”AN"はシュメール語(アッカド語ではANU")
https://en.wiktionary.org/

ムルアピン(MUL.APIN)粘土板の星
紀元前687年の粘土板Tablet1(写本大英博物館No.86378)
矢島文夫『占星術の誕生』で紹介
https://en.wikipedia.org/wiki/MUL.APIN

クドゥルの起源は紀元前14世紀
古代メソポタミアの星座の起源とされてきたクドゥル
Kudurrus of Nebuchadnezzar I (Nabu-kudurri-usur I)

バビロニアの境界石 大英博物館蔵
(高さ56㎝ 紀元前12世紀)
p040

https://www.karakusamon.com/orient/Nippur_stone.html

 

最上段:三つの天体のシンボル
左からイシュタール女神(金星)Inanna
月神シン(三日月)Sin
太陽神シャマシュ(太陽)Šamaš

二段目:祭壇(祠堂)に載せられた三つの角冠
(アヌ神、エンリル神、エア神)
Enlil

三段目:上部に鋤の載った竜(マクドゥーク神) その右に、筆記具が載った祭壇にいるヤギ(書記の神・ナプー)
右端の渦巻きの装飾のついた祭壇は、母なる女神・ニンフルサグ

四段目:左からザババ神、ネルガル神。その右の馬の首が中にある小屋の図は、どの神のシンボルか不明
右端の、杭の上にとまった鳥はシュカムナ神(あるいはシュマリア神)
Zababa
Nergal

五段目:イヌを伴って座る女神(グル女神)
弓を構えたサソリの体をした神(ニヌルタ神)
※いて座の原形といわれた
GulaNinurta

最下段(六段目)
左からアダド神(稲妻型と牛)、エア神と思われる図(カメ)、イシュハラ女神(サソリ)、ヌスク神(ランプ)
Adad
Nusku


さそりの神(ニヌルタ神)は射手座の原形であるといわれたことがよくある。
しかし、クドゥルに描かれた神々のシンボルが
星座の起源かというと、答えはNO。
クドゥルの起源が紀元前14世紀であり、一方、古代目をポタミアの星座の成立は、少なくともバビロン第一王朝時代にまで遡るものと考えられる。
クドゥルに描かれた神々のシンボルは、それ以前に作り上げられていた星座の図像と関連していると推定できる。
神々のシンボルが星座の図像としても使用されたと考えることができる。(p042)

いて座の原形「パピルサグ」

Pabilsag 
パビルサグ
(下半身がサソリで足が鳥 )wikipedia
astroarts.co.jp/2_1806.pdf

野尻抱影『星の神話・伝説集成』(恒星社 1955)
今の天文学、したがって星座が誕生したのは、西アジアにあったバビロニア。
バビロニアに天文の知識を伝えたのは、
西暦紀元前3千年ごろ、東の山岳地方からメソポタミアへ侵入して、そこに建国したカルデヤ人。
っ彼らは牧羊の民族だったので、
星のことを「天の羊」
惑星を「年よりの羊たち」と呼んでいた。そして星占いを深く信じていたので、その必要から黄道二十二の星座を設け、その他の部分にも、いろいろの星座を考え出した。

『わかってきた星座神話の起源―古代メソポタミアの星座』p049の図


紀元前12世紀の境界石に描かれたパビルサグ
射手の頭の後ろには犬の頭が描かれている。
馬の尻尾とともにサソリの尾があることが特徴である。
ギャビン・ホワイト著Babylonian Star-loreより

Symbol of Sagittarius at the Qaysariya Bazaar in Isfahan: T
he symbol of Sagittarius, drawing based on reliefs from Dendera, Egypt.
Babylonian Star-Lore. an Illustrated Guide to the Star-Lore and
Constellations of Ancient Babylonia
, G. White, 2014.


紀元前1千年紀のバビロニアの印象に描かれた悪魔を射るパビルサグ。
犬の頭は省略されている。


大英博物館にあるネブガドネツァル1世時代のクドゥル(紀元前12世紀)
サソリの足が鳥のものになっている


セレウコス朝シリア時代の印章に描かれたパビルサグ。
馬の後ろ脚が鳥の足のように描かれている


星座の起源: 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史』– 2021/1/20刊 近藤 二郎
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/
「エジプト、メソポタミアにその由来をたどる星座の起源を紹介した決定版書籍」 「現在、一般的な星座神話はギリシア神話にまつわる物語として広く知られています。しかし、人間が星座を作りだした起源は古代エジプト、古代メソポタミアにたどることができます。」
https://prtimes.jp/main/

【目次抜粋】
古代エジプトの暦と時/古代エジプト人の宇宙観/古代エジプトの星座/デンデラ神殿の天体図/天文学発祥の地・メソポタミア/黄道十二宮の星座/北天の星座/南天の星座、黄道十二宮以外の星座/古代メソポアタミアの天体観測/古代メソポタミアからギリシア、アラビアへ/ヘレニズム時代の科学と天文学/特別対談-古代オリエントの星座を求めて/索引

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