言葉言葉言葉:猫頭のノート 花冠

       

リルケ

かりそめに通り過ぎて

かりそめに通り過ぎて
十分に愛さなかった かずかずの場所への郷愁よ
それらの場所へ 遠方から なんと私は与えたいことか──
仕忘れていた身ぶりを つぐないの行いを!

 

もう一度──今度は独りで──あの旅を

静かにやり直したい

あの泉のところにもっと永くとどまっていたい

あの樹にさわりたい あのベンチを愛撫したい……


なぜなら 今や こまやかな敬虔な

ある接触を持つことが大切な時ではないか?──

Rainer Maria Rilke (1875-1926) [果樹園]