リルケを読む

かりそめに通り過ぎて

かりそめに通り過ぎて
十分に愛さなかった かずかずの場所への郷愁よ
それらの場所へ 遠方から なんと私は与えたいことか──
仕忘れていた身ぶりを つぐないの行いを!

もう一度──今度は独りで──あの旅を
静かにやり直したい
あの泉のところにもっと永くとどまっていたい
あの樹にさわりたい あのベンチを愛撫したい……

なぜなら 今や こまやかな敬虔な
ある接触を持つことが大切な時ではないか?

──Rainer Maria Rilke (1875-1926) [果樹園]

20190820 

誰のものでもない眠り

薔薇よ、おお 純粋な矛盾、
おびただしい瞼の奥で、だれの眠りでもないという
よろこび

リルケ[墓碑銘]

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