━雪が降ってきた。
━鉛筆の字が濃くなった。
こういう二行の少年の詩を読んだことがある。 十年も昔のこと、「キリン」という童詩雑誌でみつけた詩だ。
雪が降ってくると、私はいつもこの詩のことを思い出す。ああ、いま、小学校の教室という教室で 子供たちの書く鉛筆の字が濃くなりつつあるのだ、と。この思いはちょっと類のないほど豊穣で冷厳だ。勤勉、真摯、調和、そんなものともどこかで関係を持っている。

井上靖詩集「雪」彌生書房「世界の詩74清岡卓行編」