byM の迷宮の言葉

夏の詩



夏よ去れ
小林秀雄(35歳)昭和十二年(1937)


心明かすな
夏よ去れ
眼を閉ぢて
目蓋はかろし
蜘蛛の糸
雨には切れず
切れぎれに
惑ふわれかな

夏草よ
光をあげよ
海行かば
水脈は晃めく
今日もまた

空は美し
・色の蝦網のべて
指またに
水掻きつくり
風に乗り
何を嘆きし

曇り日の
雲の裏行く
はだけたる胸
汗ばめる腹
風は死に
黝き山肌
鱗ある
魚を乗せて
野の草の
靡くは何ぞ

あゝ 夏よ去れ
心明かすな
棲みつかぬ
季節よ
失せ行け
切れぎれに
惑ふわれかな
『夏よ去れ』




心を明かすなという…黙ってこの感情の嵐に耐えようと…



夏の花
原民喜(42歳)昭和二十二年(1947)
1905年11月15日 - 1951年3月13日)

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シェークスピア ソネット集(The Sonnets)
1564年4月26日(洗礼日 )- 1616年4月23日


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lastModified:2006/08/21 ・   初2001/08/19(Sun)