シェークスピアの劇的独白を愉しむ



ハムレット 第二幕第二場

俺は胡桃の殻に閉じ込められても, 無限の宇宙の王だと思える男だ。


HAMLET
Denmark's a prison.

ROSENCRANTZ
Then is the world one.

HAMLET
A goodly one; in which there are many confines,
wards and dungeons, Denmark being one o' the worst.
ROSENCRANTZ
We think not so, my lord.

HAMLET
Why, then, 'tis none to you; for there is nothing
either good or bad, but thinking makes it so: to me
it is a prison.

ROSENCRANTZ
Why then, your ambition makes it one; 'tis too
narrow for your mind.

HAMLET
O God, I could be bounded in a nut shell and count
myself a king of infinite space, were it not that I
have bad dreams.


GUILDENSTERN
Which dreams indeed are ambiti n, for the very
substance of the ambitious is merely the shadow of a dream.

HAMLET

A dream itself is but a shadow.

ROSENCRANTZ
Truly, and I hold ambition of so airy and light a
quality that it is but a shadow's shadow.

HAMLET
Then are our beggars bodies, and our monarchs and
outstretched heroes the beggars' shadows. Shall we
to the court? for, by my fay, I cannot reason.
Act 2, Scene 2 A room in the castle.



ポローニアスのレナルドーへの話は
「自分の目で忰の暮らしぶりをみてこい、そして、
好きにやらせておけ」であった。
そのあと、オフィーリアが
「おとうさま、とてもこわかった。」と飛び込んできて
「良かれと思ってやったことだったがわしの勘違いだった」
…という対話があって、第2幕1場は終わるのだが、
2場で
今度は「父」クローディアスが
ローゼンクランツとギルデンスターンに
「息子」ハムレットの「悩み」を探らせるやり方の話に続く。
そのあと、ポローニアスが
「ハムレット様のご狂乱の原因を発見」といってくると、
ガートルードは
「私には、あの子の父親の死と私たちの早すぎた結婚という
大きな理由以外にはないと思うのですが」と
すごくもっともなことをいう。

また、 第1幕2場で
ノルウェイ王のところに遣わされていたヴォルティンマンドが
ノルウェー王は甥フォーティンプラスの徴兵を差し止めたいう
知らせを持ってくる。


実を言うと、「悪党」クローディアスは、
国王として有能ではないかと思い、困ってしまう。

LORD POLONIUS
This business is well ended.

第1幕2場で
「勝手な判断は許さぬぞ、ノルウェー王との折衝は
ここに委細したためた条項どおりにしろ。
それ以上、何の権限もお前たちはない。」
厳とした政治家である。
そして第1幕1場でホレイシオが
「わが国の軍備増強の主たる原因」
「厳重な警戒態勢の理由」と言ったことを解決してしまう。
クローディアスにはフォーティンプラスは
「若造」である。
ハムレットもだろう。

ポローニアスとハムレットの対話は、また別にして、

さて、ローゼンクランツとギルデンスターンである。



ハムレット
このおれはたとえクルミの殻に閉じ込められようと
無限の宇宙を支配する王者と思い込める男だ、
悪い夢さえ見なければ。

ギルデンスターン
その夢こそ大望でございましょう
大望が目ざす実体は夢が写す影に過ぎません。

ハムレット
夢そのものが影であろう。

ローゼンクランツ
そのとおりです。大望というものは従って影の影。
空気のように実体のないものと心得ます。

ハムレット
そうなると乞食が実体で王者英雄は乞食の影というわけだな。
宮廷にでも行くか?理屈をこねる相手ならいくらでもいるぞ。

第2幕2場小田島雄志訳



ハムレット
デンマークは牢獄だ。

ローゼンクランツ
それでは世界中が牢獄です。

ハムレット
立派な牢獄だ。至るところに独房だの豚箱だの、地下牢だのがあるが、
デンマークは最悪だ。

ローゼンクランツ
我々には、そう思われませんが。

ハムレット
それでは君たちにはそうではないのだ。
そもそも、それ自体よいとか悪いいうものではない。考え方一つだ
俺にとっては牢獄なのだ。

ローゼンクランツ
それは、大志を抱いていらっしゃるから、そのようにお感じになるのでしょう。
お心にはデンマークは狭すぎるのです。

ハムレット
何を言う、
俺は胡桃(くるみ)の殻に閉じ込められても
無限の宇宙の王だと思える男だ。

ー悪い夢さえ見なければな。

ギルデンスターン
そうした夢それ自体が大志すなわち野望です。
野望の本質というのは夢の影に過ぎませんから。

ハムレット
夢そのものが影に過ぎない。

ローゼンクランツ
まさしく、野望というのは、儚く空しいもので、影の影に過ぎません。

ハムレット
となれば、乞食が実体で君主や野望に満ちた英雄たちは、
乞食の影に過ぎないということだ。
宮廷に行こうか。理屈をこねるのはうんざりだ
第2幕2場
河合祥一郎訳


国王のビジネスのおまけ
SHAKESPEARE IN CHARGE
「危機管理を考えるときクローディアスの行動は
教訓の宝庫といえる」
…と書いてある本です。
おまけに
「ハムレットはどうすれば危機管理に失敗するかを学ぶ
ケーススタディになる」と言っているのだ(^_^;;
この本は
アドベントカレンダーが終わるまで、読むのはやめよ
とにかく「誰だ?」 (HAMLETの劇の冒頭の第一句)といわれれば、
わたしは、「ハムレットの味方」…であります。(^o^;)

とにかくハムレットは孤独だ。その話はまた明日。

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