シェークスピアの台詞を愉しむ


ところで、ニ、三、言い聞かせたいことがある。
胸に刻みつけておけ。まず思ったことを口に出すな

HAMLET 1幕3場
SCENE III. A room in Polonius' house.


LORD POLONIUS
Yet here, Laertes! aboard, aboard, for shame!
The wind sits in the shoulder of your sail,
And you are stay'd for. There; my blessing with thee!
And these few precepts in thy memory
See thou character. Give thy thoughts no tongue,
Nor any unproportioned thought his act.
Be thou familiar, but by no means vulgar.
Those friends thou hast, and their adoption tried,
Grapple them to thy soul with hoops of steel;
But do not dull thy palm with entertainment
Of each new-hatch'd, unfledged comrade. Beware
Of entrance to a quarrel, but being in,
Bear't that the opposed may beware of thee.
Give every man thy ear, but few thy voice;
Take each man's censure, but reserve thy judgment.
Costly thy habit as thy purse can buy,
But not express'd in fancy; rich, not gaudy;
For the apparel oft proclaims the man,
And they in France of the best rank and station
Are of a most select and generous chief in that.
Neither a borrower nor a lender be;
For loan oft loses both itself and friend,
And borrowing dulls the edge of husbandry.
This above all: to thine ownself be true,
And it must follow, as the night the day,
Thou canst not then be false to any man.
Farewell: my blessing season this in thee!
http://www-tech.mit.edu/Shakespeare/hamlet/hamlet.1.3.html


これはオフィーリアとレアティーズの父である内大臣ポローニアスが
息子に言うセリフ。

2005年クリスマスアドアドベントカレンダーでは
シェークスピアの「ハムレットの」台詞、劇的独白・対話を愉しみましょう。
こんな、父の息子に与える訓戒・教訓・訓示・戒めもあります。

箇条書きしてみましょう(。・-・。)


Give thy thoughts no tongue,
Nor any unproportioned thought his act.
1)思ったことを口に出すな
2)とっぴな考えを軽々しく行動に移すな。

Be thou familiar, but by no means vulgar.
Those friends thou hast, and their adoption tried,
Grapple them to thy soul with hoops of steel;
But do not dull thy palm with entertainment
Of each new-hatch'd, unfledged comrade. Beware
Of entrance to a quarrel, but being in,
Bear't that the opposed may beware of thee.
3)人と親しくするのはいいが、なれなれしくするな

4)語るに足る友を見つけたら、離すな
5)だが、羽もそろわぬ雛のような仲間と誰彼かまわず握手して手をしびれさすな。
be・ware [biwer] ━━ v. 注意[用心]する ((命令形または不定詞形で))

6)喧嘩には巻き込まれないようにしろ。
7)だが、いったん巻き込まれたら相手が用心するまでやれ。

Give every man thy ear, but few thy voice;
Take each man's censure, but reserve thy judgment.
8)人の話には耳をかたむけ、自分からはめったに話すな
9)他人の意見は聞き入れ、自分の判断は控えろ。

Costly thy habit as thy purse can buy,
But not express'd in fancy; rich, not gaudy;
For the apparel oft proclaims the man,
And they in France of the best rank and station
10)財布の許す限り着るものにはお金をかけろ
風変わりなのはだめだ、上等で派手でないものを。服装はその人柄を表すという。

For loan oft loses both itself and friend,
And borrowing dulls the edge of husbandry.
11)金は借りてもいけないが、貸してもいかん。
貸せば金はもとより友人まで失うことになり、借りれば倹約する心が鈍る。

And it must follow, as the night the day,
Thou canst not then be false to any man.
12)何より肝心なのは、自分に忠実であるということだ
そうすれば、夜が昼に続くように他人に対しても忠実になる。
(訳by小田島雄志さんのものをちょっと直し)

ナカナカ…(^_^;;
…と私は思ってしまった。
俗悪な世間知の説教、と野島秀勝さん。(ワイド版岩波文庫)

セフィレッリの映画「ハムレット」では、兄妹顔をいたずらっぽくみあわせて、
父のお説教が早くおわるのを待っている風情。

… しかし明治初期に、この部分がいち早く、訳されているようだ。
1871年(明治4年)の「西国立志編」(中村正直訳)
…サミュエル・スマイルズの(1812-1904)「セルフ・ヘルプ」の訳で、
HAMLETからの訳ではなく、引用の翻訳という。
タイトルは「舌克斯畢(シェークスピア)の詩」

何の気もなく(?)取り上げたのですが、
一番新しい「シェークスピア大事典」(日本図書センター刊)の
「移入期のシェークスピアに関する研究」(佐々木隆)にそうあり、
明治時代の世相でシェークスピアを とりあげるとしたら、さもあらんと…

ちなみに三浦安針(1564〜1620)はシェークスピアと同じ年生まれで、
1613年に漂着し、ジェームズ一世(1566〜1625)の親書を翻訳してたが、
欽定聖書とともにシェークスピアも紹介したのかどうか?
元禄の 近松門左衛門(1653〜1724)の作品にプロット類似の作品がいくつかあるという。
(学問的には不確実というが。)



ここで、1番目の「思ったことを口に出すな」についてであるけれど、
これは日本人にはこのまま、なるほど、でおわるのかもしれないが、
ちょっと考えてみると、どうなんだろうか。
逆転した言葉のように思える。 「英語的思考法」という本があるけれど、
それは、「思ったことを口に出す」ことを研ぎすます思考法の文化という感じがする。


さて、明日からしばし、毎日、シェークスピアのHAMLETからのセリフを楽しみましょう。
ハムレットは、登場すると、
この胸が張り裂けても黙っていなければならぬ」、といいます。
(一幕二場 第一独白)

そして、最後には「後は沈黙」といって死にます。
さて、それでは、HAMLETその1

WEB 検索
http://www.sol.dti.ne.jp/~takeshu/Hamlet.htm
シェークスピアの森