引用 quote
かの人を語れ、ムーサよ、トロイエ―の聖(きよ)き 都を掠めた後に、諸所方々をさ迷って、数々の人の町を見、その俗を学んだ、機に応じ変に処するにたけた男を。
命を護(まも)り、一党を無事に帰国させんとて、海上で数々の苦労を心になめたが、苦心も甲斐なく、一党を救うことはできなかった。
愚かな者共よ、日の神ヒュペリーオーンの牛を啖(くら)ったばかりに、神は帰国を彼らより奪い、おのれの愚行で彼らは身を滅ぼしたのだ。
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
歌曲第1~4番:テレマキア
以下、wikipediaなども援用して、見ていきます・・
テレマキア(歌 I から IV):テレマコスはピュロスとスパルタへ父の消息を尋ねに行き、ネストルとメネラウスに尋問する。一方、イタケ島では、求婚者たちがペネロペが自分たちの一人を選ぶのを待ちながら宴会を開き、テレマコスに対して陰謀を企てていた。
第一巻
神々の会議。アテ―ネー、テーレマコスを励ますこと
人の子と神々の父のゼウスは口を切った。「死すべき人の子が神々を責めるとは、なんたることだ」
(子の)「ポリュペーモスを盲にした日から、地震(ない)の神ポセイドーンは 、オデュッセウスを殺しはせぬが、故郷(ふるさと)はるかにさまよわせている。」
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
Illustrations of Odyssey
1810年:Flaxman's Odyssey http://www.bc.edu/bc_org/avp/cas/ashp/flaxman_odyssey.html
by John Flaxman (1755–1826)
エレウシス・アンフォラ:アッティカ時代の埋葬用アンフォラ。首の部分
オデュッセウスとその部下がキュクロプスのポリュフェモスの目を潰している様子。
紀元前660年頃ポリフェモスの画家
オデュッセウスの息子テーレマコス・・イターケーの王オデュッセウスが帰国せず7年。何歳くらいだろうか?「もうそんな年ではないのだから、幼い心は捨てるのだ」と他国の人(メンテ―ス)の姿を取って訪れたアテーネー女神が言う・・
(オデュッセウスの息子テレマコスは20歳前後で、イタカ島にある父の不在の家で母ペネロペと暮らしている。)
登場人物は、オデュッセウスの愛息子テーレマコス・・公子
オデュッセウスの妻ペーネロペイア、その腰元たち
その求婚者たち・・そのリーダーのアンティノオス:敵、エウリュマコス:味方かもしれない
アカイア人の帰国の物語を歌う歌人
テーレマコスの乳母エウリュクレイア・・
使者ヘルメースはオデュッセウスを捕えているオーギュギニーの島のニンフに神々の決議を伝えに行く
(各国のwikipedia)
場面は、「イーリアス」のトロイア戦争で活躍した英雄オデュッセウスが、女神カリュプソー(「隠す者」の意)の島に囚われているところからこの物語は始まる。
主神ゼウスはじめとするオリュンポスの神々のほとんどが「オデュッセウスを故郷のイタケーに帰郷させること」を決議するが、オデュッセウスに我が子ポリュペーモスの眼を潰された海神ポセイドーンのみはオデュッセウスに深い恨みを持ち続け、海路で帰途に就こうとするオデュッセウスに様々な困難をもたらす趣旨が説明され、聴衆にオデュッセウスの帰路の旅が困難になるであろう事を前提で示しながら、また同時に英雄オデュッセウスに対してオリュンポスの神々が少なからず助力し「正しい行いをする者」を神々が憐み見放さない事を聴衆に暗示しつつ語りかけを成立させている。
物語は、オデュッセウスが多くの冒険(第 9 歌から第 12 歌)の後に、彼と結婚したがっているニンフのカリプソの島に捕らわれていることに気づくところから始まる。
イタカ島に戻って妻ペネロペを探すこともできず、彼は家族のことを思い悩んでいます。ポセイドンを除くすべての神々は、彼の帰還を支持しているが、ポセイドンは、キュクロプスの息子であるポリュフェモスの目を潰したことで彼に怒っている(このエピソードは第 9 巻に記されている)。
ポセイドンがエチオピアで宴会に出ている間に、他の神々が集まり、アテナはゼウスにオデュッセウスの帰還を許可するよう頼みます。ゼウスは同意する。
アテナはヘルメスを派遣してカリプソにオデュッセウスを解放するよう頼むよう要求し、その後、テレマコスを助ける計画をゼウスに告げる。しかし、ヘルメスが実際にカリプソに送られ、オデュッセウスが直接登場するのは、アテナに導かれたテレマコスの最初の冒険の後の第 5 巻になってから。
その後、アテナはイタキ島へ行きます。ペネロペは、島と周囲の島々の貴族に属する何十人もの求婚者から悩まされています。ユリシーズはほぼ 20 年間 (トロイでの戦争で 10 年、放浪で 10 年) 行方不明になっており、ペネロペにはイタケを統治する新しい夫を選ぶ義務がありますが、ユリシーズの帰還をまだ望んでいるため、選ぶ瞬間を無期限に延期しています。その間に、求婚者たちはオデュッセウスの宮殿に定住し、そこで絶え間ない宴会で食料を浪費した。
メンテス(オデュッセウスの家族の古い友人)の姿で現れたアテナは、オデュッセウスの息子テレマコスに、アカイア人を集めてペネロペの求婚者の行為を非難し、その後ピュロスとスパルタへ出発してオデュッセウスに何が起こったのか調べるよう助言する。
第二巻
イタケー人の評定。テーレマコスの出発
ばら色の指の曙(エ―オ―ス)が朝(あした)に空を染めるや否や、オデュッセウスのマナ息子は床をはなれ・・
テーレマコスは青銅の槍を手に寄り合い所に出かけていった。だが一人ではなく、二頭の足はやい犬が従った。
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
登場人物は、老齢で腰の曲がったアイギュプチオスの殿:味方、(愛息子アンチポスはキュクロープスに食われた)別の息子の一人エウリュノモス:敵
(オデュッセウスの友ハリテルセース?)
ペネロぺイアが織物が縫い上がるまで結婚を待って欲しいと求婚者たちに言いながら、夜は織物を解いて、欺いていたという
(ポリュボスの子)エウリュマコス:敵であった
(エウエノールの子)レオクリトス:敵
オデュッセウスの友メーントール(オデュッセウスが船出の時老王ラーエルテ―ス(?)の指図のもと留守を守るように任せた)
⇒アテーナー女神がテーレマコスの姿を借りて、船の用意をする
オデュッセウスが帰国の日に備えていた倉からエウリュクレイアが大麦や酒などを革袋に入れて準備をする
その日の夕暮れに出発(プロニオスの子ノエーモンの船)
2日目に、テレマコスは集会を開き、求婚者たちに宮殿から立ち去るよう命じました。アイギュプティオス、そしてハリテルセスの援助、そしてゼウスから送られた吉兆にもかかわらず、彼は求婚者たちの信頼を損なうことができなかった。彼らのリーダーであるアンティノウスは彼をきっぱりと拒否した。その後、テレマコスはピュロスへ旅する計画について語るが、再びレオクリトスという求婚者たちの反対に遭い、レオクリトスはテレマコスの旅を禁じようとし、突然集会を終わらせる。その後、テレマコスはメントルに扮したアテナに祈りを捧げ、彼を励まし、どんな困難があっても船で航海に出るよう促します。その後、彼女はフロニウスの高名な息子であるノエモンに軽くて速い船を願い出て、ノエモンはすぐにそれを許可した。求婚者たちの禁令を無視して、テレマコスはこの船に乗り、メントールの姿のまま女神アテナを伴って、夜にピュロス島へ向かいます。

"OdysseySuitors" by John Flaxman - From http://www.bc.edu/
第三巻
ピュロス
太陽は、不死の神々と死すべき人の子のために実り多い大地を照らすべく、麗しい海原から青銅の蒼穹に登り、彼らはネーレウスの堅固(けんご)なる城ピュロスに着いた。
※ペロポネソス半島の西 最近(?)宮殿跡が発見され、文書が出土した(by訳者)
人々は海辺で大地を揺るがす黒髪のポセイドーンに真っ黒な牡牛を犠牲に捧げていた。
※百頭牛犠牲祭(ヘカトンベー)
「船に乗ってはるかにかすむ海原をアキレウスの導くままに略奪のための彷徨、プリアモス王の大いなる町をめぐった戦闘、おお、なんたる思い出だ!」(ネストール)
「死後に息子を残すのは、なんとよいことか!」
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
アトレウスの二人の子メネラーオスとアガメムノーンの帰国を巡る争いで全軍が半分に分かれ、オデュッセウスとネストールはともにメネラーオスと帰国しようとしたが、途中でオデュッセウスはアガムノーンのもとに帰らなければいけなくなった。何も分からずに帰ってきた。
帰国後アガメムノーンは、アイギストスにだまし討ちにあったが、彼は惨めな罰を蒙った。
登場人物は、(ネーレウスの子)ゲレーニアの戦車を駆るネストール、その息子ペイシストラトス、トラシュメ―デ―ス、
テーレマコスは馬をつけ、五彩に飾った車の乗って、最後の旅程に
翌日、テレマコスとアテナ(まだメントールに変装していた)は、ネストールとその仲間たちがポセイドンに敬意を表して犠牲を捧げているちょうどその時にピュロス島に上陸した。ネストルの息子の一人、ペイシストラトスが彼らを父親のもとへ連れて行き、父親は彼らに食事に参加させました。ネストルはトロイの英雄たちの苦しみと悲惨な運命を思い出しますが、オデュッセウスに関する最近の知らせはありません。テレマコスの要請により、ネストルは戦争から帰還したアイギストスによって殺害されたアガメムノンの死について語る。ネストールは、メネラウスが数々の冒険を経て最後に帰還した人物であり、おそらくユリシーズについての知らせを持っているかもしれないので、スパルタに行ってメネラウスを尋問するようテレマコスに助言する。会話が終わると、ネストルは客たちに宮殿で一夜を過ごすよう提案した。テレマコスは同意し、アテナ・メンターは船に戻ります。翌朝、ネストルはアテナに犠牲を捧げます。テレマコスも出席し、アテナ自身もメンターの姿のまま出席します。犠牲を捧げ、体を洗い、食事をした後、テレマコスはペイシストラトスに伴われて戦車に乗ってスパルタに向けて出発する。
Nestor makes sacrifice to Athena

"OdysseyNestor" by John Flaxman
メントールの姿を取ったアテーネー、 顕現したアテーネーに牝牛の角に金箔を巻いて捧げる
第四巻
ラケダイモ―ン
彼らは谷間深くに横たわる低いラケダイモ―ンに着いた。
アトレウスの子メネラーオスは若殿メガペンテースにはスパルテーからアレクトールの娘を嫁に迎え、
姫はアキレウスの子に送ろうとして、結婚の振る舞いをしていた
メネラーオスの語る海の老人(エジプトの不死の神プローテウス(=ポセイドーンの召使)の予言、その娘エイドテニ―女神の助けで
エジプトのパロスという島から逃れた話
アイアースはポセイドンが溺死させ
無事に帰ったアガメムノーンはアイギストスが殺す
ラーエルテ―スの子(=オデュッセウス)はニンフのカリュプソーの館にいる。
「神々はお前(メネラーオス)をエーリュシオーンの野(神々に愛された人々が死後そこで幸多い生活を営んだという、ハーデースの冥府とは別の西方にある)に送るであろう
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
登場人物は、
メネラーオス、その侍従エテオーメウス
妻:黄金の糸巻竿のアルテミスさながらのヘレネーネ、アドレーステー、アルキッぺ―
ネストールの息子ペイシストラトス、
ペネロ―ペイアがふれ番メド―ンから求婚者どもの待ち伏せ殺害の企みを聞き初めて、テーレマコス(まだ子供で、苦労も言葉もまだよくわきまえぬ)が出かけたことを知る。アテーナーが遠く離れたペネロ―ペイアの姉のイプテーメ―の幻を送って慰める
日が沈む頃、テレマコスはスパルタに到着し、メネラウスとヘレネーに迎えられる。テレマコスはメネラウスの宮殿の素晴らしさに感嘆する。後者は、彼がこの富を蓄積するために経験した苦しみを想起させ、トロイア戦争とユリシーズの失踪を想起させます。
テレマコスの混乱に気づいたヘレネーは、主催者たちが自己紹介する前から、彼がオデュッセウスに似ていることに気づきます。ヘレンは客たちにリラックス効果のある飲み物を勧め、その後メネラウスと二人でオデュッセウスが狡猾さを発揮したさまざまなエピソードについて話し合います。
翌朝(叙事詩の始まりから6日目)、メネラーオスはトロイから帰還し、エジプトに至った冒険を語ります。エジプトでは「海の老人」プロテウスを尋問し、プロテウスの娘の一人であるイドテアの助けを借りて策略で彼を捕らえます。こうしてメネラオスは、長い間逆風に阻まれていたエジプトを脱出することができた。このとき、彼はトロイア戦争の他の英雄たちの運命、特に自分の兄弟であるアガメムノンの死を知った。メネラウスは、オデュッセウスが今も島で監禁されて暮らしているとプロテウスから聞かされたと述べている。彼はテレマコスに数日滞在するよう誘うが、テレマコスはそれを断る。結局、彼はさらに長くスパルタに滞在することになる。一方、イタケ島では、求婚者たちがテレマコスが父親を探しに行ったことを知り、彼を罠にかけようと決意する。
Demodokos sings Troy song

"OdysseyDemodokos" by John Flaxman .
「彼(テーレマコス)は父の名を聞いて、眼から涙を地に流し、両の手で紫の衣を目の前にかざした」
Athena tells Penelope of her son return

"OdysseyPenelope" by John Flaxman
「あなたの子は帰ってくることになっている」
第5歌から第8歌:パイアキア人たちのもとへのユリシーズの到着
アルキノオスの物語(第 5 歌から第 12 歌):難破後、アルキノオス王に保護されたユリシーズは、吟遊詩人がトロイの木馬のエピソードを朗読するのを聞き(第 8 歌)、その後、冒険を詳しく語ります。
第五巻
神々の会議。カリュプソーの島。オデュッセウスのいかだ
さて、曙の女神(エ―オ―ス)は不死の神々と人間とに光をもたらすべく、ティートーノスの殿の傍ら、臥床より起き上がった。
「私の胸には苦しみに耐える勇気がある。さぁ、これまでの難儀に新しい難儀よ、来るなら来い!」
女神は彼に握りよい、青銅の、双刃(もろは)の、しっかりとはまったオリーヴの木のすばらしい柄のついた大斧を、それからよく研いだちょうなを与えて、島のはずれに導いていった。そこには、はんの木、白楊、空にそびえる樅の大木が立っていた。もうずっと以前からから干されているので、軽く浮いて、彼の役に立つであろう
ポセイドーンの怒りを買い、イタケーに還れずにいるオデュッセウスに対して、他の神々は同情的である。ポセイドーンがアイティオピアーの宴席に赴いており、オリュンポスに不在である隙を見て、アテーナーは、大神ゼウスに嘆願し、オデュッセウスの帰国の許しを得る。神々の王ゼウスは、伝令使ヘルメースをカリュプソーの島に赴かせ、オデュッセウスを出立させる。しかし、その帰国を快く思わないポセイドーンは、オデュッセウスのいかだを三叉矛で難破させる。数日後、オデュッセウスは、海岸に流れ着き、オリーブの茂みで眠りにつく。
高津 春繁 訳
Illustrations of Odyssey
1810年:Flaxman's Odyssey http://www.bc.edu/bc_org/avp/cas/ashp/flaxman_odyssey.html
by John Flaxman (1755–1826)
アテーネー女神がゼウスに訴え、ヘルメスを使わして、ニンフにオデュッセウスを帰国させるように命じる・・
カリュプソー 女神はオデュッセウスにいかだを作らせ、送り出してやったのだが、 18日目にポセイドーンが、見つけて腹をたて、大波を送りいかだをばらばらに。
彼を見つけたイーノ―・ レウコテエ―の女神に与えられた、不思議のヴェールをまき、1本の材木にまたがって、山なす大波の間を三日海原を漂い、パイエークスの陸地につく。
第六巻
ナウシカアー
剛毅な尊いオデュッセウスは眠気と苦労とに精根つきて、休んでいたが・・
高津 春繁(こうづ はるしげ、1908- 1973)訳
by John Flaxman (1755–1826)
難破したオデュッセウスを海岸で助けたのは、パイアーケス人の王アルキノオスの王女ナウシカアーであった
登場人物は、パイエークスの王アルキノオスの姫ナウシカアー:アテーネー女神が仲良しの友デュマースの姿で、洗濯に行くようにいう。
オデュッセウスを見つけて服を与える。

"OdysseyAlcinoos" by John Flaxman

紀元前440年頃、ヴルキ出土のアッティカ赤像式アンフォラ。オデュッセウスが裸でスケリア島に漂着した後、アテナがオデュッセウスとアルキノオス王の娘ナウシカアの面会を仲介する様子が描かれている。オデュッセウスは女性たちから裸を隠そうと、哀れにも数本の枝を集めている。
第七巻
オデュッセウス、アルキノオスの館に到着
アテーネーは、オデュッセウスのため、だれか生意気なパイエークス人がオデュッセウスに出あって、彼を罵り、誰かと尋ねないように、濃い霧をその身の周りに注いだ。
高津 春繁
訳
オデュッセウスはアルキノオスにカリュプソー女神のオーギュギエーという島に7年いたと話す。
第八巻
オデュッセウス、パイエークス人に会う
パラス・アテ―ナーは大いなる心のオデュッセウスの帰国をはかって、アルキノオスの布告使に身をやつし、町じゅうを歩き回り、一人一人のそばに立って言った。
「さあ、パイエークス人の長と頭たち、賢明なるアルキノオスの館に海をさ迷って着いたばかりの、その姿は不死の神々にも似た、よその人のことを知るために、評定所に出かけられい」
歌人デーモドコス・・
かれをとりわけ歌の女神(ムーサ)は愛したが、幸いと災いの両方を与えた。その目は奪ったが楽しい歌を与えたのだ。
デーモドコスは、妻のアプロディ―ティーとその愛人のアレ―スのを懲らしめるへーパイストスの物語をうたった
高津 春繁 訳
アルキノオスの子ラーオダマース、エウリュアロス達の競技
歌曲第9番から第12番:「アルキノオスの物語」
第九巻
キュクロープス
わたしが死の運命を遁れた時に、たとえどんなに遠くに住んでいようとも、あなた方の友となれるように、わたしの名を明かそう
ゼウスがトロイエーーよりの帰りの道で私に下されて苦難に満ちた旅の物語をお話ししよう
食連人(ロートパゴス):花を食っている民族・・蓮の甘い実を食べた者は、みんな、帰国を忘れてしまった
キュクロープス:怪物のような大男・・部下たちは、わたしに頼んだが、わたしは、耳をかさず、怪物に会いたいと思い、かれから土産をもらえはせぬかと期待した。
むごい心のかれは何も答えず、さっと立ち上がりざま、仲間の者に手を差し延べ、一緒に二人の者をひっつかんで、地べたに叩きつけると、はらわたも肉も髄にみちた骨も、何一つあますところなく食いつくした。
キュクロープスに酒を飲ませて酔わせ、目をヒの付いたオリーブの棒でつきさしてつぶす
部下たちは私を止めようとした「無茶なお人で、どうしてあの野蛮人を怒らせようとなさうのです」「私の大いなる心はそれにい従わず、怒りにまかせてかれににもう一度言いかけた」
キュクロープス、誰か死すべき人の子がおまえのみっともない盲になったわけを尋ねたら、オデュッセウスが盲にしたというのだぞ
高津 春繁 訳
このあたりの、オデュッセウスは愚かで、結果としてキュクロプスが、名を挙げて、父のポセイドンに帰国させないように祈った・・

オデュッセウスの船に石を投げつけるポリュフェモス。アルノルド・ベックリンによる絵画、1896年。
第十巻
アイオロス、ライストリュゴーン人、キルケ―
ヒッポテースの子アイオロス:九歳の牛の皮を剥いで作った袋の中に咆え叫ぶもろもろの風の道を閉じ込めて、私にくれた
どんな町や土地に行っても、この人は人気があってて、大切にされるのには驚いたなぁ・おれたちは全く同じ旅をしながら、空手で家に帰るのだ。
何が入っているか、見てみようじゃないか
われとわが愚かさゆえにわたしたちは破滅に陥ったのだ。
神に憎まれている証拠だ
高津 春繁 訳
ライストリュゴーン人、人間ではなくて巨人のような男ども・・部下を食べる
アイアイエーの島、魔法を使うアイエーテスの兄弟女神キルケ―
アカイア人を自分の隊とエウリュコスを隊長とする二組に分けた。くじで二十二人を連れてキルケ―の館へ。
ヘルメス:「どこへ、またも、不幸な人よ、ただ一人で」
「お前の部下たちは、キルケ―の館で豚の姿でおりの中に詰め込まれている」
「かれらを解放しにかしこへ行くのか。だが、自分も帰れず、他のものと同じところにとどまるのは必定だ」
「この草を以ていくがよい」
(神々はそれをモーリエと呼んでいる)
1年すごす(また勇気を胸の内に取り戻すまで)
アイオロスの風によって帰路に就こうとするが、船員が誤って風の袋を開け、来た方角に押し戻される。アイアイエー島の魔女キルケーに船員は豚にされてしまう。オデュッセウスは、ヘルメースに授けられた魔法を防ぐハーブ・モーリュにより助かる。キルケーは、オデュッセウスがオーケアノスを越えて、冥界に行かなければいけないことを話す。
キルケーによって動物に姿を変えられた部下に解毒剤を配るユリシーズ、古風な黒絵式の杯。紀元前560-550年
第十一巻
招魂
アキレウス「命のない死人の王となるよりは、生きて、暮らしの糧もあまりない土地をもたぬ男の濃度になりたいものだ」
高津 春繁 訳
キルケーが示したオーケアの巣の果て、・・生きながらにハーデースの館に降りて行く
テーバイのテイレシアースの予言をきくように
我が子オデュッセウス恋しさが命を奪ったという母にあう。その他 ・・テューロー(ぺリアースとネーレウスの母)、アンティオペー(ヘラクレスの母)、エピカステー(オイディオウスの母・妻)、クローリス(ピュロスの女王 ネストールの母)、レーデー(カストールとポリュデウケーの母)、イーピダメイア(オートスとエピアルテースの母)、パイドレー、プロクリス、アリアドネ―、マイラ、クリュメネー、エリピュレー
アガメムノ―ン、アキレウス、パト六レース、アンティロコス、アイアース
ミーノ―ス、オ―リオーン、ティテュオス、タンタロス、イーシュポス、へーラクレースの幻
ヘーラクレースのジブラルタル海峡を越えて冥界に行く、母アンティクレイアの幽霊やトロイア戦争で死んだ兵士の幽霊に会う。また、預言者テイレシアースに会う。
第十二巻
セイレーン、スキュレ―、カリュプディス、太陽神(へ―リオス)の牛
「部下の人たちの耳には、誰にも聞こえないように、甘い蜜蝋をこねてお塗りなさい。ですが、あなた自身は、聞きたいと思えば部下の人たちに脚速い船の中であなたを立ったまま手足を縛らせ、縄の端は帆柱に結わえさせるのです。これで二人のセイレーンの歌をたのしみながら聞くことができます。あなたが部下の人たちに説いてくれと頼んだり念じたりすれば、もっともっとたくさんの縄で縛らせるのです」
「あきれた方、またも武者震いして、戦の苦労を歓迎していらっしゃるのね。」
高津 春繁 訳
太陽神(へ―リオス)の牛を食べたため、ゼウスによって、部下たちは海に沈む
オデュッセウスの航海と冒険の話の続き。キルケーの館より出て、仲間たちと船を進ませる途中、セイレーネス(セイレーンたち)という人の顔を持ち鳥の身体を持つ怪物がいる島の傍らを船は通過する。セイレーンたちの歌を聴いた者は、すべての記憶を失い、怪物セイレーンに近づきその餌食とされる。しかし、オデュッセウスは、その歌が聞きたく、仲間たちの耳は蜜蝋で塞ぎ、自分は帆柱に縛り付けもらい、身動きできないようにして、無事通過する。オデュッセウスは、セイレーンの島に進むのだと叫ぶが、仲間たちは歌もその言葉も聞こえないので、そのまま無視して進んだ。
次に、怪物スキュラのいる岩の横を通過する。スキュラは、六本の頭で仲間たち六人をくわえて捉えむさぼり食うが、オデュッセウスを初め、他の仲間は何とか無事にスキュラの岩の傍らを通過できた。
それから、さらにヘーリオスの家畜がいる、トリーナキエー島に一行は上陸する。オデュッセウスは、あらかじめに警告を受けていたので上陸を止めたが、仲間たちが上陸すると云って聞かず、やむをえず上陸する。すると、やはり凶事は起こり、部下がヘーリオスの家畜をみだりに殺し食用にしたため、家畜を世話していたヘーリオスの娘ラムペティエーはそのことを父に知らせた。ヘーリオスは、怒ってゼウスに訴えたので、ゼウスは船に雷を落とした。彼らの船は再びスキュラの岩とカリュブディスの近くに流され、今度は、大渦巻きですべてを飲み込むカリュブディスの岩の下の海に吹き寄せられた。船は仲間を含めて渦巻きに飲み込まれたが、オデュッセウスだけは助かり、カリュプソーの島に流れ着いた。
アッティカ黒絵式オイノコエ「セイレーンの歌に抵抗するオデュッセウス」、紀元前525-500年、Altes Museum Berlin