女神 -生ける自然の母- 』を読む

「イメージの博物誌」30

アルデ ゲティ Adele Getty (著),
田中 雅一 (翻訳), 田中 典子 (翻訳)
: 平凡社 (1995/01)
*1953イギリス生まれ、

目次読書

  1. 生ける自然の母
  2. 起源神話
  3. 種と余剰
  4. 神の抱擁
  5. 光の息子たち
  6. 家父長による逆転
  7. この隕石の上にて
  8. 求められていなかったマリア崇拝
  9. 自然、女性、女神
  10. ガイアの視点
  • 図版
  • 資料図版とその解説
  • 訳者解題―女神の時代

まず出てくる図

「テルス・マテル(地母神)」
Ara Pacis, eastern side in Rome, Italy
復元されたアウグストゥスの「平和の祭壇」パネル
ローマ、紀元前13から9「年」の「テルス・マテル(地母神)」
目次の後にまず出てくる図(p004)
Wikipedia(アラ・パキス)によれば、

「東壁のもう1つのパネルは保存状態がよいが、描かれているのが何であるかについては議論がある。座った女神の膝の上に双子が描かれており、肥沃さと繁栄を描いたものと思われる。この女神が誰なのかについては、テルス、ウェヌス、パークスといった説がある。
祭壇の意図を考えればパークスが最もふさわしいが、今もってこの女神の正体については議論が続いている。」

http://en.arapacis.it/percorsi/esterno
※この一番に出てくる図の、復元されたアウグストゥスの「平和の祭壇」パネルだが、 紀元前「13世紀」から9「世紀」作というのは、「年」の印刷ミス。・・・ (この本、そのほかいろいろミスがあるかもで、注意して見ていきたい。(~_~;))

(p004) 「聖なる女神テルス、生ける自然の母、生命の糧
汝が施しを与えたものは皆、汝の子宮に戻る。まさしく、汝は神々の母と呼ばれる。汝の忠誠心によって神々の力を征服したからである。まことに汝は人々のそして神々の母でもある。」 『テルス讃歌』(2世紀)

検索追加

http://en.wikipedia.org/wiki/Terra_(mythology)

In ancient Roman religion and myth , Tellus or Terra Mater ("Mother Earth") is a goddess of the earth.


そちらのAion mosaic Glyptothek Munich アイオン(クロノス)と獣帯(Zodiac)はこちらでも
それにしてもこちらのCura (Greek Kore)の話( テルス =ガイア 大地女神、 サトゥルヌス=クロノス 農耕の神、 ユピテル=ゼウス ローマの最高神 プロセルピナ=ペルセポネ 農業の女神、が出てくる) 、興味深かったhttp://yojiseki.exblog.jp/6623385/

生ける自然の母

生命、太母神(グレート・マザー)への敬意
さまざまな姿をとって現れる、 与え、奪う者
時間軸に沿って明らかにされる女神の物語
いかにして最高の位置から下落してきたか
女神は次第に抑圧されて言ったが、ほかならぬ女神の性質自体も常に周期的であり、生命の性質にはめ込まれたもの
女神は彗星 のように、何度も何度も戻ってきた
現在、女性運動と環境運動の精神を通じて戻ってきている。
今破壊と支配の階級的な衝動が、生の飛躍(エラン・ヴィタル)を摩滅し 、地球全体の消滅に直面しているので、
女神の生命を維持する力というものが再び重要になってきている。
地球の大いなる生命系を科学的に理解することを、ギリシアの大地の母にちなんで 「ガイア仮説」と呼ぶのには、何の不思議もない

ガイア仮説・・⇒Wikipediaガイア理論松岡正剛の千夜千冊 『ガイアの時代』ジェームズ・ラブロック アマゾン:ガイアの時代―地球生命圏の進化

ローマ神テルスTellus ギリシャ名 ガイア 大地女神

起源神話

タイトルの下にある下記の引用は「グノーシス派の讃歌」とあるが興味深い。・・
(p006) 「私は最初にして最後のもの、敬われるものであり、さげすまれるものであるゆえに・・・
私を彼らは生と呼び、あなたがたは死と呼んだ。


創造の問題とは、「まったく何もない空間から、何が現れうるだろうか」と問うことだ。

サンスクリットでは、創造原理をあらわす力女神シャクティとして知られる
古代ギリシア人のペラスゴイ人の神話(太母エウリュノメ)・・創世記の天地創造の物語はそれに似る: (配偶者は蛇)
北米のインディアンの天地創造の物語でも同じテーマ(曾祖母ワカン)
かっては多くの学者が初期のポルノグラフィであると主張
骨や枝角や象牙に刻まれたもの・・・槍や銛や逆刺鏃(やじり)=武器とされたものは、 女性の 自分自身の周期や植物が季節毎に成長するのを観察したしるし⇒自然の周期性
アレクザンダー・マーシャックによれば、しるしは植物で、洗練された儀式が見出される
旧石器時代少なくとも5万年は継続した文化があった


古代ギリシア人のペラスゴイ人の神話(太母エウリュノメ)
図006 ジェィムズ・メトカフの木版画
ペラスゴイ人の神話では男根を表す蛇は、太母エウリュノメの配偶者とされる。聖書の天地創造では両者の関係は歪曲され、エバの役割は創造者ではなく、単なる誘惑者となっている

Wikipediaエウリュノメーでの説明は以下
「ロードスのアポローニオスによるとエウリュノメーは蛇神オピーオーンの妻で、オリュンポスの最初の支配者であった。しかしオピーオーンがクロノスとの力比べに負けたとき、オピーオーンとエウリュノメーはクロノスとレアーに王権を譲り、海の中に姿を消したという」


図p008 ヴィレンドルフのヴィーナスVenus of Willendorf ウィーン自然史博物館(Naturhistorisches Museum)収蔵 (旧石器時代オーリニャック様式22,000年から24,000年前)Wikipediaヴィレンドルフのヴィーナス

図p009 ラスコー洞窟の通路を飾る動物たち、(洞窟の神聖視) 女神と人間の狩猟儀礼との密接な関係を示す

図p009 ドルス・ヴェストニーズ(クラヴェット文化)
「刻み込まれた線は月経か妊娠の記録だろう」


エウリュノメ

Wikipedia:ペラスゴイ人の創造神話では主神
Barbaroi!


種と余剰

p010「万物の母なる大地(ガイア)を歌おう。揺るがぬ礎(いしずえ)持つ、神々の中、最も年長けたる女神をば。
女神は地上のにあるすべてのものを養いたもう。

尊き地を歩むすべてのもの、海中に棲むすべてのもの、また空飛び交うすべてのものは
あなたの冨により養い育まれる」『ホメーロスの諸神讃歌』前7世紀 (沓掛良彦訳註 平凡社1990年刊)

エリコは放射性炭素年代測定法によれば、前9550年に、聖なる泉の場所に建てられた
居留地は三日月の形に作られ、家々はミツバチの巣の形だった。
どちらも強力で永遠なる太母神の象徴

「エリコで見つかったたくさんの三日月型の石鎌」というものを検索しているがよくわからない。・・

この 西アフリカの女性たちが、三日月形の鎌を振り回しながら、初潮の儀礼をおこなっている、とキャプションのある写真(p011)には驚いた。

1960年代前半ジェィムズ・メラート(James Mellaart)発掘チャタル・ヒュユクcatalhoyuk・・前6500年~前5700年に栄えた
発掘された139の部屋のうち48は女神の社
壁の奇妙なレリーフ・・歯のある胸
太母神の対をなす性質・・死と破壊の能力と母性的な気遣いと

ジェィムズ・メラートの仮説・・新石器時代の女性=宗教の創始者。 美術に於ける性は、概して男性の衝動や欲望に結びついている


(p012の図)キャプション
「粘土でできた女神の小彫像、豹とともに王座についている。
チャタル・フュユクの神殿から出土。
動物の女王としてのキュベレの最も初期の彫像と思われる」
Ankara Muzeum B19-36Ankara Muzeum B19-38
Ankara Muzeum Mother Goddess Cybele,
ネコ科動物のヒョウを従えて玉座に座っている。出産中。
地母神とライオンのページにこの女神の後ろ姿の見られるサイトへのリンクあり


女神と獣たちの密接な関係
女性の象徴・・胸・臍・妊娠中の腹部 男性の象徴・・雄牛・雄鹿・雄羊・角
女神の存在が男性に対する女性の優位を示しているわけでもない。 なぜなら、彼女はいつも、雄牛・雄羊・雄鹿を同伴しているからである。

ハジラールの遺跡(前5600~前5000年)・・
長い編み下げ髪を背中まで垂らした処女
胸に子どもを抱いた母親
垂れた乳房と髪を後ろで束髪に結いあげた老婆

「ハジラールの宗教ではっきり示されていることが一つある。それは女性が優位にあることだ。」ジェィムズ・メラート


図p013ミノス文明のクレタ島の女神
「情け深い家の守護神、不死と再生の象徴である忠実な蛇を高く掲げている、一方彼女の頭上では、鳥(※)が見張り番をしている。クノッソス、前1600-580頃」
※このキャプションはおかしい?鳥ではない?ネコ科動物である


マリヤ・ギンプタスの先駆的な著書「古ヨーロッパの神々

南東ヨーロッパに、前7000年から3500年の間に独自の新石器時代の文化があった

旧チェコスロヴァキアと、西ウクライナから国会まだ、またエーゲ海・アドリア海にいたるまでの地域に高度に発達した文明
メソポタミアからエーゲ海・クレタ島の発展に影響を与えた。
以前考えられていた近東からの影響でなく、旧石器時代まで遡る文化の担い手
生命の創造と発生という女性原理の重要性

「ハジラールの宗教ではっきり示されていることが一つ 蛇の象徴のないのが特徴である、チャラル・ヒュユクと違って、南東ヨーロッパでは蛇と鳥とが多女神の主要なモティーフである。(p013)


女神は常に、蛇ともっとも友好的な関係にあった。また、彼女は世界中で、蛇より高い領域への道を飛ぶ鳥と結び付けられている。蛇と鳥との関係は,古代のシャーマンによる入門のための脱魂儀礼の一部であり、そこで入門者は、脊柱の根元にとぐろを巻いている蛇を目覚めさせるという体験をする。
蛇は中枢神経系の主要部分にそって身体の「生命の樹」を上昇し(※)、変身して、最終的に飛び立ってシャーマンを神聖なものの世界へと連れて行く鳥となる
鱗を持った蛇と羽をもった鳥との変換関係は、マヤ文明のケツァルコアトルという大蛇の話にもっともよく体現されている。
エジプトでは、女性のエネルギーのうち鳥の性質を持つ相はネクベトになった。 それは禿鷹の姿の神であり、出産の守護神として拝まれた。
これと対になる蛇の相はウアジェト、つまりコブラである。それは大地に植物を繁茂させる。 これらが対になって王の標識の一部となった。「二人の貴婦人」としても知られる。 (p013)

※・・この辺りは後ほど・・ 詳しくは『古ヨーロッパの神々』マリヤ・ギンブタスを読む


インド都市ハラッパー 前3000年紀
発達上それらはヨーロッパや中東で生じた事態に対応する・・第一の神は太母神(豊穣力)
サー・ジョン・マーシャルによる分類
腕に子を抱いた母神または妊婦
手を胸に載せたい鳥頭の女神
洗練された三日月の被り物をつけ、腹に帯をまき、ネックレスやイアリングにした宝石を身につけた半裸の像
こういった型に加えて、どくろのような顔で生命をむさぼり食うような恐ろしい母を表す女神の像も
ヨニ(陰門)の描写、頭に山羊の角をのようなものをつけた女神・・再生の普遍的な象徴

ハラッパーとモヘンジョ・ダロで開花したドラヴィダ人による洗練された文化は、前1700年ごろ、父権的なアーリア人の侵略者によって滅びた
アイーリア人またはバラモン司祭たちはカースト制度を作り、「光の息子たち」(※)が皮膚の黒いドラヴィダ人と結婚することを禁じた。
このため皮肉にも女神は現在に至るまでインドで生き延びることができた (p014)



「ルリスタンで見つかった青銅の頂華は、豊穣性と月との結びつきをはっきりと示している。それは野生の山羊の曲線状の角で表されている」
ルリスタン(Luristan)地方=イラン北西部の山岳地帯
http://www.1911encyclopedia.org/Luristan

初期の農耕定住地は、古い旧石器時代の特徴を備えている。 すなわちふれたものすべてを増大させ、富裕・豊穣を実現する女性の神や、生命に対する深い敬意。平和主義的で階層的な構造・・J.Jバッハオーフェンの考えていた母権社会の本質的な特徴
調和のとれた共存のモデル)


前2000年紀
暴力的な構想、攻撃的で競争的な衝動へ堕落した理由?
農業の発展に答えがある
人間の共同体に関する初期の農業の影響「新石器時代革命」
発展の中で生じる支配と抑圧
耕作が始まると地域の生態的なバランスが崩れ始め、人口が増えていくと、環境を開発し消耗することが生活の方法となっていった


動物の家畜化。生命を作る家庭における男性の役割がはっきりわかり、 動物を支配することによって次第に女性や女神を「飼いならし」、服従させることが推し進められていくことになった。
雌牛の群れ全体に種付けするために一頭の強力な雄牛を選び出し、他の雄牛は除外する
フロイトの「去勢コンプレックス」の実際の源
動物=兄弟姉妹(親族関係)トーテム⇒動物はある意味最初の奴隷となった
処分可能な余剰物や市場向けの品物は社会の階層化やより中央集権的な政治支配をもたらす
女性は男性の種の受け手とみなされ出した
男が生殖の役割を侵害し、相続権が父から息子に伝えられるようになり始めた。
「文明」の誕生は「父系」の誕生でもあった (p015)


家父長的な侵害
「男性の生殖力の事実に反する隠喩」バッハオーフェン


神の抱擁

p016「わが女王、世界の女王、世界を包みこむ女王よ、彼、王が、あなたの聖なる膝の上で長い間喜ばれんことを」(シュメールの粘土板)(※?)
肥沃な三日月地帯ーチグリス・ユーフラテス川流域ーで、書記法が発達してくる(※)と、女神の名や称号がわかってきた。

バビロニア・・イシュタル、
フェニキア・・ アスタルテまたはアシュトレト
キリキア・・アテ
インド・・アディティ
女神は文化という文化で、多くの名前を持って現れる

※「書かれたことが読めるようになってくると」ということ?

エジプトでは、女神は常に神々の中できわめて重要な位置を占めていた。
王朝時代、ネクベトは天空神ヌートと、世界を作り天界にラーを置いたネイト(ギリシアのアテネの祖先の一人)へと分化させられた
彼女の数多い姿のうち、もっともよく知られているのは翼のあるイシス((玉座)
エジプトではあらゆる財産権は母系を通って娘へと伝わる


アナトリアの大女神キュベレ、キュベベまたはクババの歴史は新石器時代まで遡れる。
「万物の創造主」
彼女は隕石として空から落ちてきた
両性具有の存在ともいわれる


シュメールでは、イエンナ
王国の文化的・精神的中心であるニップールの王座に座っていた
「偉大なる天界から偉大なる冥界へと降りてくる」天の力に変身

子どもを抱いていることもある。 長い外衣を着た男性=植物の霊、ドゥムジの原型と一緒のこともある。
ニンフルサグ、イエンナ、イシュタル、キュベレ、処女マリアが息子を弔った
4000年前の銘版で聖なる愛の女神イエンナの冥界への降下を読むことができる
=現存する最古の神話
試練・死・復活というテーマは、 イシュタル、ぺルセポネ、、ディオニュソス、最終的には新約聖書へ


神宮を頂点とする階層社会が生まれつつあったが、古代シュメールでは女性はもともと力を持っていた。そして多くの女性祭司がいたと記録されている
しかし人口の増大に対処するためにますます階級的になっていく社会と漸進的な権力の集中化は 古い秩序の平等で女性中心の親族集団を侵食
エラムの女神フンバンは夫シュシナク
前三千年紀・・ 「弱さの父」
前二千年紀の半ば・・「神々の父」
「エヌマ・エリシュ」 ティアマトは自分自身の息子マルドゥクによって殺される最初の者
前8世紀・・「天と地との神々の守護者」
アラブ人は紅海をティアマト と呼ぶ
バーバラ・ウォーカーによれば、紅海はティアマトの経血の貯蔵所

※Wikipediaティアマト・・息子とは書いてない。「ティアマトはすべての神々を産んだ母」?
孫の世代に当たる神々に、マルドゥク(エアの息子)Wikipediaエア=エンキ 8メソポタミア神話) ※Wikipediaエヌマ・エリシュビロニア神話の創世記叙事詩、マルドゥク神が中心
図p018 シュメール人の器(前2700年頃)
蛇や豹に脇を守られているティアマト(Tiamat)
「家父長の圧力は、彼女を優しい神から、自分の息子マルドゥクに殺される混沌の龍へと変身させることになる」
Wikipediaティアマト「マルドゥクは彼女の体を二つに引き裂き、一方を天に、一方を地に変えた。」


それにしても「アンク・エス・カー・ラー」の墓のレリーフ? それって誰?とか、 検索して時間かかっちゃいましたよ

ツタンカーメンが「トゥト・アンク・アメン」で アンケセナーメンが「アンク・エス・エン・アメン」) ですから、 なんでしょうか、アンケスカラー??・・ないですよね? (どうも表記が特殊なのです(~_~;))
只今改装中のパリのMusée de l'Homme人類博物館所蔵のようだが http://www.museesdefrance.org/museum/news/openclose.html
エジプトの紀元前2000年ごろというと、中王国時代(第11~12王朝)でしょうか ??
この検索で、
1.久しぶりにネットで笑う http://reichsarchiv.jp/item/1683
2.久しぶりにいいなぁと思う
http://www.asahi-net.or.jp/~mf4n-nmr/syasinsyu_1.html
3カ月の船旅・・うむうむ・・などなど

脱線ばかりで、すすみませんが、少し間をおいて 図像検索をしながら次に続きます・・
//と言いながら、下の章で「マリヤ・ギンブタスによれば、」ということがが出てきたため、そちらを優先


光の息子たち

p019「私は女性の仕事を破壊するようになった」(エジプト人による福音書)(※?)

北方の侵略者の群れ、攻撃的で好戦的な人々は、一般に後期旧石器時代に北ヨーロッパ、とくにデンマークから生じた(アーリア人、インド=ヨーロッパ人)

早くは前5千年紀にヨーロッパのヴィンチャ文化の女神崇拝の中心で、彼らは古ヨーロパ文化の最初の花を破壊した

彼らの最も破壊的な武器は、彼らが持っていた父なる神 
旧石器時代の夜のように暗い洞窟の、古代の太母やチャタル・ヒュユクの子宮のような宮殿と違って、彼らの神は山頂や輝く空に燃え上がる光の神だった。こういった天空神のイメージは、火山の噴火や、天からの流星雨もあったろう。
あれ我の想像力は地上から引き離され、怖れや崇拝の商店が展の大空に充てられることになった
アーリア人が広がっていったところでは、彼らの神の第一の敵は母なる女神であり、彼女を信じる多神教徒、アニミストたちだった
女神をパンテオンからすっかり追い出すための戦略は、彼女を殺されるべき悪魔やの化け物や龍に変えてしまうことである
蛇や龍が神話の中で報告されている場合は、それらは古い女神の宗教の隠喩だと仮定してよい
インド=アーリア人の「リグ=ヴェーダ」では蛇の悪魔女神ダヌが山の神インドラに殺される
バビロニアでは、太陽の息子マルドゥクが、龍である自分の母ティアマトを殺す。
ヘブライの神ヤハウェは蛇怪物レビヤタンを殺す。
ガイアの息子テュポンとピュトンは山/嵐の神ゼウスと太陽神アポロンに殺された
アイルランドから蛇を追いだしてキリスト教を確立した聖者パロチックの神話
中を殺す聖者ゲオルギウスの話・・みな同じ物語の一部である って

男性の神は光の持ち手とみなされていたので、女神との戦いでとられたもう一つの策略は、洞窟の(ということは子宮の)暗さを邪悪とすることである。文明世界のいたるところで光と暗闇の力の間で多くの戦いが行われることになった

女神が恵み豊かな生命の源から新しい神の敵へと変身した
全ての女性も、生まれつき邪悪で罪を犯していることになる

ヤハウェ『申命記』:あなたがたが処分した民族が神々に仕えていた場所は、すべて完全に破壊せよ
『レビ記』の中で産後の女性は、周りの人を汚さないように、儀礼的に浄められなければならなかった
女性は繁殖するものとい家畜の位置に貶められた
ヤハウェにしたがう家父長たちの新しい命令は「道徳」という名で確立したが、遺憾な点が多かった


家父長による逆転

p020「だいたいが母というのは、その母の子と呼ばれる者の産みの親ではない。その胎内に育った胤(たね)を育てるものにすぎないのだ。 子を儲けるのは父親であり・・・」アイスキュロスの『オレスティア』中のアポロンの台詞 (呉茂一訳世界文学体系2 筑摩書房1959年刊P72 )

女神が無力にされていくのをもっともはっきりと記録しているのは、考古学上の証拠やギリシア世界の神話文献

前三千年紀と二千年紀、クレタ文明の芸術の中で、女神は豊かに表現されている
この島が圧倒的に女神崇拝の中心だったことを示している
父系のミュケナイ人が移住する以前からクレタ島に住みついていたミノス人は母系であり、シンクレア・フッドのようなギリシア学者は、ミノス人の女性が統治者や 祭司の役を果たしていたと述べている


この隕石の上にて

p023「人間として十全に成長するためには男に生まれることだ」トマス・アクイナス


求められていなかったマリア崇拝

p025「聖なる女王よ。慈悲深き母よ。私たちの生、いとしい人よ、希望よ。あなたのために祈りを捧げます。かわしそうな追放されたエバの子どもたちが・・」(現代カトリックの祈り)(※?)


自然、女性、女神

p027「地球にふりかかることはすべて地球の息子たちに降りかかる。人は生という織物を織ることはできない。人は一本のより糸にすぎない。織物に行うことはすべて自分に行っているのだ」(チーフ・シアトル)(※?)


ガイアの視点

p028「私は地霊だ。大地の強さは私の強さだ。私は大地の聖なる言葉だ。」(ナヴァホ・インディアンによる聖歌)


資料図版WEB検索

まずはp033のバビロニアの女神ですが、「黒い巻毛、翼のような肩、爬虫類を思わせる笑顔・・」
ウル前4000~3500テラコッタ15cm

原著

原題 Goddess: Mother of Living Nature
(Art and Imagination Series)
Beginning with the Paleolithic Age and drawing on ancient Greek, Chinese, Native American, and Near Eastern cultures, Adele Getty portrays the myriad historical and mythological perspectives of the female archetype. Illustrated. (旧石器時代と描画から始まり古代ギリシャ、中国、ネイティブアメリカン、そして中近東の文化まで、アデルゲッティは、女性の原型の無数の歴史と神話の視点を描いている。図示。)
Describes the role and history of the goddess, the personification of Mother Earth, among the various peoples of the world, and shows some of the ways artists of different cultures have depicted her (女神の役割や歴史、母なる大地の擬人化を説明し、世界の様々な人々の間で、異なる文化の芸術家が女神を描いている方法を示す。)

バーバラ・ウォーカー:
神話・伝承事典―失われた女神たちの復権

マリア・ギンブタス:
古ヨーロッパの神々


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