第6章 宇宙生成論と宇宙論のイメージ
図50 古典ククテニ文化の壺に描かれた蛇と円のモチーフ。
ルーマニア北東部、モルダヴィア、ハバシェシュティ出土。
なぜこれほどまでに蛇に関心が寄せられたのだろうか。
蛇ン神秘的ダイナ水実や、卓越した活力、周期的に若返る成体といった俗生は、新石器時代の農耕民に圧倒的な感動を呼び起こしたに違いない。その結果蛇という動物は全宇宙を動かしうる力を持つものとして神話化された。
たとえ場向けあるべ日の一対が再起の方の部分に表されることがある。
蛇が自らの身体を渦巻とする力を以って「世界を回転させている」ことを意味したのではないだろうか。
蛇の形態は新石器・金石過渡時代を通じて図式化されたが、そこにはいくつかの段階があった。比較的、自然主義的な表現の場合は、蛇の頭部と胴体と尾がはっきり見分けられる。
しばしば円盤のような形と蛇で構成された帯状文様が、壺の真ん中を横切るようにあらわされる・・
図51 後期ククテニ文化の壺に描かれた蛇=渦巻文様、雨雲、飛び跳ねる犬、植物モチーフ。
西ウクライナ、シピンツィ出土。前5千年紀中葉頃。
マケドニアのポロディンにある新石器時代の遺跡からは粘土製の蛇が多数発見されている。もともとは水を入れるために祭器についていたものらしい・
神話上の水蛇や水鳥は、水中から湧き出る活力の隠喩である。古ヨーロッパの象徴体系においてこの2つの像(イメージ)は密接に関連しあっていた。
人間の姿を借りた蛇として現れる<蛇女神>像が新石器時代初期から古代ギリシアに到るまで一貫して現れている。
図53 古典ククテニ文化の壺。降雨の文様を覆う蛇の抽象的デザイン。
西ウクライナ、南ブ―ク川流域、ウラジミロフカ出土。前5千年紀末(p100)
しばしば円盤のような形と蛇で構成された帯状文様が、壺の真ん中を横切るようにあらわされる・・
星マークの付いた牛の国旗
Lesser Coat of Arms of Ukraine
「渦巻および螺旋模様に関する研究の整理という意味では、海野弘の「装飾空間論」(美術出版社 1973年刊)、渡部真臣の「螺旋空間の図像学」(「萌春」264日本美術新報社)などがある。
渦巻に関する研究の中で、特に注目すべきものは、ケレーニイの「迷宮と神話」であろう。」