wikipediaの項目であるがアナーヒター(@Wikipedia)を 閲覧した。(20190812)
ゾロアスター教において崇拝され、ゾロアスター教神学では中級神のヤザタに分類されるが、主神 アフラ・マズダーや 太陽神 ミスラ に匹敵する人気を誇る
ペルシアの女神「この神は、イシュタルやアスタルテに習合している」ともあるが、私にはそちらがメインという意識であったので、Taq-e Bostan - High reliefにもこの女神が登場しているのに驚きを覚えたものだった・・。
バーバラ・ウォーカー(「神話・伝承事典」大修館書店)
アナヒドとその変化形である
アナヒタAnahitaとアナイティスAnaitisは
ペルシアとアルメニアの名前で、ギリシア神話のヴィーナス、バビロニアとアッシリア神話のイシュタルと、フェニキア神話のアスタレテに相当する女神である。
海と星とを支配し、運命の女神である。
ミトラ信仰の秘儀はとても男性中心的なものであったが、創造の女性原理として、アナヒタをなくてはならない女神とした。
Cumont,M、M.,180(キュモンの著「ミトラの信仰(1956)」p180)
ド・フリース(「イメージ・シンボル事典」大修館書店)
ハンス・ビーダーマン(「世界シンボル事典」八坂書房)
http://ejje.weblio.jp/content/Anahita
WEB辞書の解説
アナーヒターAnahita、ペルシア神話に登場し、ゾロアスター教において崇拝される女神
Anahita
(Iranian mythology) the name of an Iranian goddess, associated with fertility, healing and wisdom
アヴェスタ avesta 4世紀または6世紀の間に集められたゾロアスターのテキストのコレクション
(a collection of Zoroastrian texts gathered during the 4th or 6th centuries)
2012-03-12 「オリエント史講座 3 渦巻く諸宗教」(前嶋信次、杉勇、護雅夫編 学生社 1972刊)の補論として、最後の12ページ、図は23ありました。
「イランの女神 主神アフラ・マズダ、軍人ミトラ(セ)と共にゾロアスター教(マズダイズム)三神の一」というのはともかく、
部分部分であったのが、これで初めて全体的に見られました。
WEBの図像なども検索しつつ以下抜き書きを・・
✳アナーヒターテラコッタ図像など15図が 同著者の天理大学学報
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/GKH005908.pdfにあり。
→図について、このPDFで見られないものは同著よりスキャン引用した。
p305 宝冠を戴き、ネックレースをつけ、長い上衣をまとい、両乳をあらわし、手には水瓶や柘榴を持つ。 これらはすべて多産・子育ての象徴である。
ゾロアスターの教典アヴェスタのアーバン・ヤシトによると、その名をAradevi Sura Anahitaといい、 「高く、強く、清きもの」の意=「天の川」(全ての川と水の源泉)の女神(byキュモン)として多産と豊穣を司ったが、実際には子授けの神として庶民の信仰を集めた。p306 メソポタミアのスサからも大量の像が盗掘された。ギリシアよりもローマの影響が認められる。膝に小児を抱くのは処女神としてふさわしくない、とアッケルマン女史(✳) ・・しかし、多種多産の象徴柘榴と小児は元来一体
p306 柘榴は多産のシンボルとしてアナーヒタ―の属性中に重要な位置を占める
実はアーバン・ヤシトには柘榴は全然記されていないのは一奇である
私は図4でザクロを確認できないのだが?
玉座には2頭のライオンでなくスフィンクス様の人面獣神の女性像。
図6.ナルセ―王に叙任するアナーヒター女神 (ナクシルスタム摩崖、3世紀 ササン朝)
図7.コスロー二世に叙任するアナーヒター(ターキブスタン摩崖、6世紀)裾が波状
体が透けんばかりの薄い絹の衣装
(あまり関係ありませんが、図の6.7のキャプションが逆)
p307 一般にギリシア、ローマないしはオリエントの諸像が全裸ないし半裸であるのに対して、
これらの諸像がいずれも豪華な衣装をつけていることは注目すべき現状であるが、アナーヒタ―の衣装は
アーバン・ヤシトにおいても極めて華麗に描かれ、
「彼女は美しい娘である。強健で丈高く、ベルトを胸高に締め、金糸の刺繍を施した上衣をまとい、イヤリングやネックレースをつけ、黄金の冠を戴き、三十匹のビーバーの皮衣を着る。」
川に棲むビーバーの皮を着る=河神
ゾロアスターの三神もミトラはインド系で、「アフラ・マズダもインドのアシュラ・ヴァールナに由来する」(by O・E・ジェームス✳)以上、
純イランの民族神はアナ―ヒーターのみ。国粋的なサーサン朝がアナーヒター神殿の司祭の家から発祥した)
『図解 水の神と精霊』 山北篤(新紀元社 2009)(books.google)
p310
鳩はアナーヒタ―のお使鳥(attribute属性)、花は三弁花(トリデント)で、
O.M.ドルトンによると蓮(起源はエジプトにある)
元来は太陽のシンボルだが、ギリシアでは〈若さと力〉のシンボルとされた。
アケミニード朝のアナーヒター像 ギリシア風のキトンとぺプロス着用、頭髪はアジア風の「お下げ」(当時はギリシアでも裸体の女神像はなかった。ミロのヴィーナスの如き全裸像は前4世紀以降)
✳オクサス遺宝(Oxusはアム・ダリヤ川の古名)p310 のち 2-3世紀 ナナ=アナットやナナイヤ女神も蓮の花を持ち、いずれもアナーヒタ―の後身である。
✳貴霜朝=クシャーナ朝(Wikipedia)欠損している箇所の関係で一見、翼のある女神に見えた。
腕の装飾はインドでよく見かける多数のブレスレット?
p311 サーサン時代のアナーヒター像の著しいものは多くの銀器がある
頸部に真珠、全身に星をちりばめたタイツをつけ、半分カウナケスを脱いだ美人
頭の上に丸い地球形、頭の部分を星のついた光背(フヴァルナ)で囲まれた姿
手に鳩をもち、エロスに囲まれたさまはヴィナスで、足下の孔雀はジュピターの妻ジュノとの習合を示す 。
p311 アナーヒターのさらに軟化した実例
周囲を6個のアーケードで飾り、いずれも頭部にフヴァルナをめぐらし、その上に丸い地球を載せて神性を表示
各々の持ち物
(1)コップと子犬
(2)柘榴と小児
(3)片手に花 片手で小鳥にブドーを与える
(4)水鑵と水筥
(5)花を持ち、豹にブドー酒をやる
(6)フルーツ盤と宝冠
犬は羊群を守る。「豹はコプト織に見るように、ディオニュソス儀礼との習合によってアナーヒタ―の属性に組み込まれた」(シェファード女史)
アナーヒター神殿の神殿娼婦(ハーロット)であることを必ずしも否定しない
図14 ペルシア陶皿13世紀
From the Freer and Sackler Galleries of Washington D.C.
It was made by a prominent potter known as Shamsuddin al-Hasani Aby Zayd.
(シャムスディン・アル・ハサニ・アビー・ザイドとして知られる著名な陶工によって作られた。)
p312 白鳥庫吉博士も引く、ストラボによると、
バクトリアを征服したサカ(塞)族が、アルメニアを陥れて「サカセーネ」の州名を遺す
「サカエアの大祭」
アナーヒター神殿の神殿売春、娼婦(ハーロット)、男娼(ヒーロドゥール)
図14はさらに一歩を進め水中で魚と共に泳ぐ裸女
エッチングハウゼンは、魚(マーヒー)は男根を意味するといい、後世アナーヒターは艶笑の題材となった
✳フリーア美術館(Freer Gallery of Art)@USAワシントンD.C.
(en.wikipedia)Freer_Gallery_of_Art
*白鳥庫吉『西域史研究』(wikipedia)
*ストラボ(ン) Strabo:Geography『地理史』 (en.wikipedia)Geographica
(初代ローマ皇帝アウグストゥス時代のギリシア人)
✳エッチングハウゼン Richard Ettinghausen (1906 –1979)(en.wikipedia)フランクフルト→USA
R.Ettinghausen :The iconography of a Kashan luster plate(1961)
p313 三日月をいただく
三日月はイシュタールの属性
臍にルビー
ノイマンは臍は子宮と並んで女神の原点をなすものとし、聖俗の判定は困難であるが、全て、アナーヒターとみてよい。
p313 アナーヒターはその源にさかのぼると
スメルのイエンナ、バビロニアのイシュタール、
アッシリアのアスタルトから、ギリシアのアルテミスに続く
古代オリエントの大地母神の系列に属する。
これらはいずれも絶大の権力を有するが、イエンナ像には魚を付したものがあり、確かにアナーヒタ―の起源である。
大母神といえども生産のためには男神を必要とする。
イエンナにはドゥムシ、イシュタールにはタンムズ、
アスタルトにはベルとそれぞれの男神が、冬期地下に隠れる母神を訪ねて両神交会し、春ともなれば万物一斉に生成すると古代人は解した。
母系社会の遺制として人類と大自然を含めた最高の総合神
それがギリシアに入ると、 牧畜はアルテミス、 農業はデメーテル、 アテネが軍神、アフロディテが愛神と分化した。
この総合神から分化神への移行はアーリア族進出の結果とみられる。
しかも分化はまた習合をうながし、アナーヒタ―の神性も複雑を極めるものになった
アッケルマン女史による「絵解き」
アケメニード朝をはるかに超えた前3-200千年紀に遡る天空を司どる巨大な大鷲が、裸体のアナーヒターを抱えている。
彼女は例によって美しく結髪し、手に得意の柘榴を持ち、豪華なネックレース、ブレスレット、アンクレットをつけるが、左右両側に立つのは太陽のシンボル蓮。
このアナーヒターは金星(ヴィナス)そのものだった。
元来アナーヒターは天空神ミトラの恋人・・ミトラは単なる太陽神となり朝太陽が昇ると金星が消えるところから、
恋人殺しの説話が生まれた。
左下の幼児太陽が弓矢で「明けの明星」を殺そうとしている
右下の半月型の斧をかついだ小児は月で、「宵の明星」を殺そうとしている。
p315
ユーラシア草原の遊牧民の間のアナーヒター信仰
ヘロドトスの記す、女神ウラニア・アフロディテ=アナーヒターに馬の犠牲を捧げる
p315
図20、
宝座にかけて頭上は長衣を被り、手に便を持った女神像
傍らに馬の骸骨
長衣をつけたアナーヒターが寒冷
の南露で生まれたことも明らかになった。
図21は裸(イシュタール女神
p316《ヒッタイトのイシュタール》 といわれる着衣の女神
ベット・シュウシュカ=着衣のアナーヒタ―の原形
アフラ・マズダの有翼太陽版と同様のものが見いだされ、第18王朝以来エジプト文化がこの地に及び、ゾロアスターの太陽版はこの地を通じて得たのだった。
サマルカンドのアナーヒター諸像の着道楽は北方草原の遊牧貴族の風習を反映したもので、 その大粒のビーズや水瓶は、中国の観音像の祖形となった。
これに対して《インドのアナーヒター》たるサラスヴァティは、 西部インドの今は干上がった同名の河の女神で琵琶を弾じ、後の弁財天の祖形となった。
✳ヒッタイト(英:Hittites八ッティ)首都ハットゥシャ(現在のトルコのボアズキョイ遺跡)、前1650~1200年頃、西アジアを支配した、インド=ヨーロッパ語族のヒッタイト人の国p316 アナーヒターがメソポタミアの大地母神の後裔であることを如実にしめす全裸の小ブロンズ像
結髪はラガシュの乳の女神ニンフルサグそのまま