太母神 Dia Mater

最古の「女神」


蛇と女神(エジプト)についてこちらでみてきました
ここでエジプト以外の古代の女神であるが、最も古い[女神]は?・・メソポタミアの、 ティアマト(ナンム)であると何かで読んだことがある。どうだろうか?

ティアマト Tiamat

「海水」ティアマト(女性要素)

バビロニアの『エヌマ・エリシュ』(✳)によると、はじめこの世には「海水」ティアマト(女性要素)淡水アプス―(男性的要素)のみが存在し、 双方が混じり合うことで最初の神々が誕生し、その子孫から高位の神々の祖アヌが生まれたという。
のちに起きた新旧神々の対立のすえティアマトはマルドゥクの手にかかって殺され、その死骸から新しい天地の構造が作られた。

おそらく空想上の太古の海の女神ナンムをモデルとした存在であろう。

『古代オリエント事典』
 (古代オリエント学会編 岩波書店2004年刊) 
松島英子

*「エヌマ・エリシュ(「天地創造物語」)は宗教的大作で知られるが、この大作は7つの詩編からなる作品で、バビロニアの主神で、神々の王マルドゥクの栄光をたたえたものである。」(『世界神話大辞典』p168イヴ・ボンヌフォア著大修館2001年刊)

「バビロニア王ハンムラビがメソポタミアを統一して都市神マルドゥクの地位が向上した、紀元前18世紀に成立したと考えられている。」(Wikipedia20190811閲覧)

太母神 Dia Mater

ティヤマートTiamart

シュメール―バビロニアの太母神 Dia Materで、天地創造の際その無形体の身体から宇宙が誕生した。
深淵Tobu Bohuの擬人化。
バビロニア人はのちに、彼らの都市の守護神マルドゥック(ティヤマートの息子)が母親を上方の天と下方の大地とに分離したと主張した。マルドゥックの模倣者である聖書の神も、同じように天と地を分けた。
(中略)
ティヤマートを分割して、マルドゥックはディアメテル(「地平線})を確立したが、これはティヤマートのギリシア語系で、女神―母を意味する。


Nammu(Nar-Marratu)ナンム


「宇宙の母」に対するシュメールの名で、 「海」を意味する表意文字で表された。 彼女はティヤマートTiamart、あるいはインドとエジプトでともにマー・ヌーと呼ばれた原初の母。すなわち創造の前に存在していた「親縁」と同一視されていたように思われる。シュメールの書物によると、彼女が「天と地を生んだ」という。

 『神話・伝承事典―失われた女神たちの復権―』 
(バーバラ・ウォーカー著山下主一郎ほか訳 大修館書店 1988年7月刊) 

『神話のイメージ』ジョゼフ・キャンベル著

(山下主一郎ほか訳 大修館書店 1991年7月刊)

 古代シュメールの天体観測者たちの考えによると、宇宙は、無限の海から階段状になって隆起している、大きな山の形をしているとされていた。

(中略)

シュメール文明後期、紀元前2000年頃の、粘土板に刻されている楔形文字のテキストでは宇宙の大女神ナンム―の名は、「海」を意味する記号で示されており、「〚天-地』を生んだ母(ama tu an-ki)」として賛えられている。

さらに、フィラデルフィア大学博物館に保存されているほぼ同時代の別の粘土板では、「この〚天-地』が、原初の海から姿を現わしたとき、それは山の形をしており、頂である『天』(An)は男で、低い部分の『地』(ki)は女であった。同じように天と地を分けた。そしてこの二面性を持つ神から、大気の神エンリルが生まれ、エンリルによって、『天』と『地』は分けられた」と述べている。 (p74) 

原初の海はナンムと呼ばれ、シュメール・ルネサンス(ウル第三王朝✳)の中でティアマトと呼ばれるようになった。
(「シュメール神話」Wikipedia20190811閲覧 )

✳ウル第三王朝
3rd dynasty of Ur)は、紀元前22世紀から紀元前21世紀にかけてメソポタミアを支配した王朝。

「ウルに人が居住を始めたのは紀元前5千年紀半ば。ウバイド式土器やウバイド時代の墓などが発見されているが、都市が本格的に拡張を始めるのは紀元前4千年紀に入ってから」と、Wikipediaウルの項にある。・・

「ティアマト」と呼ばれるようになったのは、それから2~3千年もたってからということだ。


 

最古の女神の名前は、結局、ナンムで、結局、彼女は「海」なのだ。

郷愁 (三好達治)

逍遙(海そして母その一)
蝶のような私の郷愁!…….。
蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る…….。
私は壁に海を聴く…….。
私は本を閉じる。
私は壁に凭れる。隣の部屋で二時が打つ。
「海、遠い海よ! と私は紙にしたためる。
――海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。
そして母よ、仏蘭西人(フランス)の言葉では、あなたの中に海がある。」

ここでwikipediaの項目からであるが(デーメーテール閲覧20190812)

デーメーテールの名前も後半「メーテール」は古代ギリシャ語のを意味する言葉である。前半の「デー」ははっきりとはしないが、大地を意味する「ゲー」(ガイア)が変形したものであるとの説が有力である

wikipediaの記述はギリシア・ローマ神話がメインで、私の関心の、「太古」からみれば、少し新しい・・

ここでは ティアマト=ナンム=海を確認したが、
「最古の女神」といえば、

→紀元前2~3万年のいわゆるヴィーナス像もみるべきだろう。

「失われた女神たち」「古ヨーロッパ」

この後、個別の「女神」を見たいと思う、分類として、

アンソニー・グリーンの『メソポタミアの神々と空想動物』(2012)では、「天空の神々」と「地下世界の神々」とに分けている。
天と地を分けた神を継ぐのであるから、これも納得であるが、ここでは、主たる職能(?)から三つに分類してみたいと思う。

 

ちなみ、前掲書によれば、紀元前3千年紀初頭ごろから、神名表が楔形文字練習用に作られていたという。しかし、長い間に再編されたり性別も変わったり、同じ神が各々の伝統によって祀られ、矛盾も多いという。

そういうわけであるが、 ここでは、女神とは、という基本から、一般的な女神を分類してから、見ていきます。


A.母なるもの(母性):産むもの、育てるもの、守るもの
B.女性的なもの(性的):美しきもの、若き娘、堕落させるもの

C.その他:教える者、導くもの

 

『神の文化史事典』(松村一男ほか編白水社2013)に続く、

『神のかたち図鑑」(松村一男ほか編白水社2016)では


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