中田 一郎(平凡社世界大百科事典)
イシュタル Ishtar
バビロニアの代表的な女神。シュメールではイナンナInanna (〈天の女主人〉の意) と呼ばれ,カナンのアスタルテ,ギリシアのアフロディテ,ローマのウェヌス (ビーナス) に相当する。ド・フリース(「イメージ・シンボル事典」大修館書店)
繁茂の女神で、毎年、息子―恋人を救い出すために冥界へ降りて行くが、その途中門番達を買収するために着ている服や
装飾品を1つずつ与えていく。
そのため彼女は女王アラル前へ出た時は裸身になっている。
そして地上に戻るとき、また服や装飾品を一つずつ取り戻す。
この場合裸身は植物の枯死を意味し、イシュタルの冥界下りは月の満ち欠け、周期的な巡りを表す。
イシュタルはアナンではアシュタルテと呼ばれ、しばしば聖書に登場する。
イシュタル礼拝(とそれに伴う宗教上の売春)についての言及は実に多い。
彼女はしばしばバール(神を表す)とともに礼拝されてきた。
イシュタルは母音変化してアシュトレトAshtoreth と蔑称されたこともある。
バーバラ・ウォーカー(「神話・伝承事典」大修館書店)
バビロニアの「星」の意の太女神
聖書には「天后」(「エレミア書」44:19)に相当するアシュトレト、アテネ、アシュラ、またはエステルの名で登場する。また「大娼婦」(大いなる聖娼)でもあり、
「ヨハネの黙示」17:5では、「大いなるバビロン」「淫婦どもの母」と述べられている。
アッカドの資料によると、イシュタルは中東の各地において、デア・シリア、アスタルテ、アフロディテ、コレ、マリなどの名で崇拝されていた例の太女神であったことがわかる。
冥界の神も、イシュタルが彼女の息子―愛人タンムーズを救出すべく冥界に下っとき、彼女の前に頭を垂れた。
このイシュタルの冥界下りは、イシュタルの先輩に当たるシュメール太女神イエンナが、やはり自分の息子―愛人ドゥムジを、冥界から救出したときの経緯と同じだった。
ギルガメシュによれば、太女神イシュタルは愛人に対して残酷だった。
それは、彼女の愛人たちが、自らの地で大地の生産力を回復させるあの生贄となる男神を体現していたからである。
Queen_of_the_Night_(Babylon)
大英博物館(ロンドン)所蔵)
イシュタルまたは彼女の姉エレシュキガル(紀元前19世紀または18世紀頃)
起源a.
「リリスはタルムードのよれば、アダムの最初の妻で、彼女は夫に服従するよりはと、夫を捨て大気へ去って行った。」
起源b.バビロニア-アッリシアのリリット(女の悪霊)だそうだ
他の神話で対応するものは
エジプト;吸血鬼、
ギリシア:ラミア、男まさりのヘカテ、アマゾン、フクロウを聖鳥とするアテナ
北欧神話:クリームヒルトに敵対するブリュンヒルト
(地下世界の神々)
名前の意味は「大地下世界の女王」。
地下世界を支配する女神、
ヌンガル女神の母、エンリルとの間に伝令を務める家臣のナムタル神をもうけた。最初の夫はグガルアンナ。
イナンナは「イナンナの冥界下り」という物語において、姉エレシュキガルの夫グガルアンナの葬儀に参列するため地下世界に下った。
並木 浩一(平凡社世界大百科事典)
アスタルテ Astart[ギリシア]
イシュタル Ishtarカナンのアスタル
Wikipediaによると
アスタルト:
地中海世界各地で広く崇められたセム系の豊穣多産の女神。崇拝地はビュブロス(Byblos、現在のレバノン)などが知られる。 メソポタミア神話のイナンナ、イシュタル、ギリシア神話のアプロディテなどと起源を同じくする女神と考えられ、また周辺地域のさまざまな女神と習合している。
アスタルテ=古代セム人の豊穣多産の女神;バビロニアでは=イシュタル
wikipedia アスタルト