ネコの宗教 -動物崇拝の原像- 』を読む

「イメージの博物誌 」21

ニコラス・J. ソーンダズ (著), Nicholas J. Saunders
渡辺 政隆 (翻訳)
: 平凡社 (1992/05)

*1953イギリス生まれ、他の著作『ジャガーの民』(見当たらず)

原題(Art and Imagination)The Cult of the Cat
このシリーズ、約20年前の平凡社の「イメージの博物誌 」は、アマゾンでは心理学・オカルトのところにあり、少しひきますが、ちょっと違うのでは。他に「生命樹」など、私には興味深い分野です。
英語タイトルに"Cult"とありますが、オカルト・・新興[にせ]宗教の少数の異常な信者たち、ということではなく、普通に、古代の宗教儀式 Cult (religious practice) でよいのでは。
ネコはネコでも、ネコ科動物に関するもので、荒俣宏さんの「獅子」の西洋限定版という感じもあります。

2011-02-20 図版をかぞえてみたところ、
大きい物33、小さい物96ありました。初見も多く、詳しく見るのが楽しみです。

目次読書

  • ネコという呪文の下に
  • 風景の中の捕食獣
  • 人間とネコ科動物について
  • 精神世界のハンター
  • 王権と権力の象徴
  • 図像と宗教の中のネコ類
  • ネコ類に似た架空の動物
  • 飼い慣らされてはいるが自由
  • 「ネコ印」

  • 図版
  • 資料図版とその解説
  • 訳者解題―ネコの転生

ネコという呪文の下に

ネコ科動物というシンボルほど、長期にわたって許容され、広く受け入れられているシンボルはない。
ヒトという種が進化した当初から、ネコ類は人間の想像力に深甚な影響を及ぼしてきた。


大型ネコ類は、感嘆の念と恐怖心を呼び起こし、 太古の文明から現代に至るまで変わることなく、その宗教心、イデオロギー、芸術の伝統にしっかりと組みこまれてきた。


小型ネコ類にしても、野生のものにしろ、時代が下って家畜化されたものにしろ、ネコ科動物の霊魂が体現されたミニチュアとして、われわれの感情や迷信の中に座を占めてきた。
全てのネコ類が、何らかの意味で儀式や宗教的行為の中心に据えられている

もっとも初めの引用(p5)


ネコ科動物のイメージは、人間の想像力に対するその影響力を保持し続けてきた。


風景の中の捕食獣

ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、そしてイエネコ
力とスピード、忍びやかさと迷彩色と「知能」
現存ずる40種類余りのネコ類の大半は、ここ200万年ほどにわたって生息してきた
氷河時代(更新世)・・人間の手ごわい競合者
ヨーロッパ:ライオン(Felis leo)とヒョウ(Panthera pardus) 、中国:トラ(Panthera tigris) 、アメリカ:ジャガーの住処
巨大な捕食獣はマンモス、ゾウ、オオナマケモノ・・これらの獲物が1万年ほど前に姿を消す
南北アメリカには、氷河時代以降ライオンも虎も豹も生息していない
それに代わる大型ネコ類は ピューマ(Felis concolour)、それより大きい ジャガー(Panthera onca)
ジャガーの祖先はおよそ50万年前までユーラシアに生息
ジャガーはアメリカ大陸に出現したのは200万年前
家ネコが登場したのは紀元前1500年ころ
ほとんどの専門家は、リビアネコ(Felis silvertris libica)か、 それより大型のジャングルキャット(Felis chaus)とリビアネコの雑種に由来していると考えている


人間とネコ科動物について

卓越したハンターが備えている死の臭いと美しさ
150万年前の人類骨化石・・アウストラロピテクスは狩猟される側だったかもしれない
3万8千年前・・人間とネコ科動物を合体させた架空の動物像
ライオンの絵は草食動物とは分けられ洞窟の奥でみつかるのが普通
ラスコーの洞窟の『「ネコ科の部屋」 3万2千年前の石器時代ライオンの頭部をもつ人間像・・マンモスの象牙彫刻


人精神世界のハンター

農業や科学が存在せず、霊魂の活動と妖術の威力が現実のものとみなされていた世界
ネコ類のオーラ
半人半獣・・シャーマンが変身したもの
狩人や戦士やシャーマンとの同一視・・連想による威信を獲得
ネコ科動物の相貌や行動を観察しまねる
東アフリカのマサイ族の戦士・・ライオンのたてがみを身につける、
サラワクのダヤク族・・ウンピョウの毛皮の皮をまとって戦いに赴く
シャーマン・・動物の支配者(マスター)(支配者になりきる)
アマゾンのシャーマンは麻薬の影響かでは「ジャガーの眼」で世界を見ていた
(コロンビア大の人類学やジェラルド・レイチェル=ドルマトフReichel-Dolmatoffの研究)



王権と権力の象徴

p13

世界中の狩猟社会の狩人、戦士、シャーマンは自分たちと大型ネコ類とを結び付けてきた
自己同一視→王族の象徴性と庇護の力に浸透
ソロモン王の玉座はライオンに支えられていた。 古代エジプトでは新しいファラオの戴冠式では支配者が「ライオンの玉座」についた
スフィンクスが王権の擬人化だった
ライオンの胴体とファラオの頭部・・神聖な座の尊厳を冒す人間を襲う『万人』
先史時代のメソポタミア・原始時代からライオンが王の地位と同一視されていた
ブロンズ製のライオン像の足の間から初期の王の名が刻まれた石板が見つかっている バビロンのネブカドネザル王の玉座には雄ライオンの装飾
シュメールの『ギルガメシュ叙事詩』・・ライオンを抱える、踏みつける、戦う、メソポタミアの王権の創始者。


英雄とライオンとの神話的な闘争
アメンヘテプ3世、ラメセス2世、アッシュールバンパル・・
ヘレニズム時代・・アレクサンドロス大王・・ライオンの頭をかたどった冑
ローマ人・・たくさんの大型ネコ類をずらりと並べて見せびらかす風習。大衆の娯楽・・紀元前55年のポンペーウス
ハリエット・リトヴォ著 『動物の所有権』・・大英帝国イギリス人が外国の人々や異国の土地を征服するという隠喩
贅沢な毛皮製品取引
コロンブス以前のアメリカ・・古代マヤの君主・貴族は自分たちの公式の称号に「ジャガー」 という意味の象形文字を採用していた
メキシコのチチェン・イツァーの遺跡「赤いジャガーの玉座」 (73個余りの赤い瑪瑙)
グアテマラのティカル遺跡ジャガーの毛皮で作った優雅な服をまとった支配者の木造彫刻
重要人物はジャガーの毛皮、爪、頭骨といっしょに埋葬された
アステカ・・ジャガー(=動物の君主)が宗教的信仰の中心
アステカ王権の守護神テスカトリポカ「煙の鏡の王」の側面
ジャガー神をたたえるために人間の血を流す アンデス地方・・クコアという獰猛なヤマネコ信仰

古代インカ帝国・・ピューマが王権の象徴
成人した王族の紋章には、トウモロコシの金色の穂を束ねて作られたピューマの頭部が描かれた
西アフリカのぺ人・・票を買うことは王の特権
チベットの虎の敷物。7世紀の玉座がトラの毛皮で覆われていた。ダライ・ラマの王宮入口の敷物
ヒンドゥー教文化圏・・シヴァ神の聖なる象徴(虎の毛皮、豹の毛皮)
最後のエチオピア皇帝 ハイレ・セラシエ皇帝の称号・・「~~~~ユダのライオン~~」
マリ帝国・・マリ・ジャータ=マリのライオンによって創始された
ザンビアのオヴァンボ族・・族長が死んだ瞬間にライオンに変わると信じられた
ナイジェリアノカメルーン・・ハンターが豹を自分の目上の者に与える儀式・・豹仲間(人類学者マルコム・リュエル)
20世紀前半のアフリカ1920年イギリス植民地「ライオン男」1957年「ヒョウ男結社」等の犯罪

以下途中

図像と宗教の中のネコ類

p19


飼いならされてはいるが自由

p26


ネコ印

p29

ネコ類の神秘性は今も昔と変わらす強力


資料図版WEB検索


デイヴィッド・ホックニーのネコの絵
http://en.wikipedia.org/wiki/Mr_and_Mrs_Clark_and_Percy
Mr. and Mrs. Clark and Percy, 1970 - 71 クラーク夫妻と猫のパーシー (テート・ブリテン蔵)
Wikipedia(David Hockney、1937年7月9日 - )
公式サイトhttp://www.hockneypictures.com/

web検索 The Cult of the Catというページ・・ http://homepage.ntlworld.com/alienor/catcult1.htm


『種の起源』は専門家向けの学術書ではなく、一般読者向けに発表された本である。名のみ知られるばかりで、その内容については多くを語られることのなかったこの歴史的な書を、画期的に分かりやすい新訳で贈る。 進化学はすべての生物学の根幹をなしている。そしてそのすべてのルーツは『種の起源』初版にあるのだ。端緒を開いたダーウィンの偉業、それは進化の研究を科学にしたことと、進化が起こるメカニズムとして自然淘汰説を提唱したことにある。
(訳者渡辺正隆さん2009年刊)

The cult of the Cat
ネコとライオンについて 以下続く


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