ディドロのフラナゴールの絵画評から

Fragonard coresus sacrificing himselt to save callirhoe
《コレシュスとカリロエ》 Musée du Louvrehttps://www.louvre.fr/
「大司祭コレシュスの犠牲」 ジャン・オノレ・フラゴナール
フラゴナール《カリロエを救うためにみずからを生贄に捧げる大神官コレソス》


《コレソスとカリロエ》の大きさは高さ 311cm、幅 400cm あり、
フラゴナールの作品 の中でもっとも巨大である。

 

憤怒のイコンを検索していて、こういう研究を拝読した。
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/56927/mgsl056_061.pdf

そこで美徳の擬人像補遺である。フラゴナールというかロココの絵画は好きでないものが多いが、ディドロの「百科全書」やポンパドール夫人像を嫌いというわけにいかない・・ 
以下同論考から引用する・・
課題の絵は、

1765年にはパウサニアスの著作からとられた、それほど有名でない主題に基づく油彩作品《コレスュスとカリロエ》(ルーヴル美術館)をアカデミー入会承認のための作品として制作、「サロン」に出品し、批評家ディドロの絶賛を受けた。

(リーパのイコノロジーで)
Vne Fureur sanglante, & de peu de durée.
「憤怒。
怒りはここで、完全武装し、竜の頭を象った兜飾りをつけた若い女性として描かれてい る。彼女は片手に剣を、片手に燃えさかる松明をもつのみならず、炎を口から吐き出し ている。このことは、この情念があたりかまわず剣で攻めかかり、炎をまき散らすこと を明白に示していると思われる。
したがって、憤怒が次のように定義されるのもゆえな きことではない。〈血も涙もないが、長続きしない怒り〉」

フラゴナール《カリロエを救うためにみずからを生贄に捧げる大神官コレソス》画中 の〈絶望〉像について フラゴナール《カリロエを救うためにみずからを生贄に捧げる大神官コレソス》画中の空 を飛ぶ二人の人物について、ディドロは「〈愛〉(Amour)が〈絶望〉(Désespoir) の背中に乗って運ばれている」と説明しているが、このうち、恐ろしい 顔をして手に短刀と松明をもつ人物が〈絶望〉とよばれる根拠はどこにあるのだろうか。
ディドロが「絶望」とよぶ精霊について、マリー=ポーリーヌ・マルタンという研究者は、 「怒り」(Fureur)の図像的伝統に従ったものであると説いている。
古代において怒り・憎 しみ(Ire / Haine)はすでに、松明と剣をもった人物として表現されてきたのであり、そ のことは、近代においてもっとも広く用いられた図像学の教科書、チェーザレ・リーパ『イ コノロギア』(1593年 70))の次の記述によっても確証される。
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/56927/mgsl056_061.pdf

精霊が「怒り」だとすれば、これは熱心な愛を受け入れないカリロエに対するコレソスの感情を体現していると解釈できる。フラゴナールの画中でこの精の上方に「愛」が描かれてい るのは、コレソスがカリロエへの「愛」によっておのれの「怒り」を打ち負したことを 徴していると思われる。

リーパおよびブーダールの図像集では、「絶望」は女性像として描かれていたが、ここでは 男性像も許容されている。

さらに、ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』(高階秀爾監修、河出書房新社、1988 年)、項目「希望」(104 頁)には、「〈絶望〉は中世美術では剣によって、あるいは首を吊っ て自殺しようとする擬人像によって表される」とあり、「絶望」が首吊り自殺者としても描 かれることがわかるが、実際に、ジョットーのフレスコ画中の「絶望」ではそうなっている。
「絶望」と自殺との関連は深い。そもそも、17世紀以前は、désespoirという語そ「自殺」を含意していた(suicideという語は18世紀に現れる) 。

画中のコレソス は、まさしく自殺者である。 ディドロは、コレソスと〈絶望〉の図像上の近接性を理解した上で、空中の精を「絶望」 とみなしたのではないだろうか。この問題については、さらなる探求が必要である。

以上大阪大学レポジトリのディドロ研究(山上氏)論考PDFからの長文の引用であるが・・

prudentia.htmlから再掲すると

※リーパのイコノロギアであるが、下のものでは、「憤怒」は男であった。 (ForgottenBooks .com:)英語版ペーパーバッグ(2018年7月刊)
擬人像は女性(女神)という認識なので、驚いた・・

チェーザレ・リーパ『イ コノロギア』(1593)、
※近代においてもっとも広く用いられた図像学の教科書
(別ページ)→karakusamon.com/ripa.html

 ディドロの百科全書
1751年から1772年までに全28巻(本文17巻、図版11巻、その後補巻・索引が作られた)
(別ページ)→ka・・.com/encyclopedie.html

結論としては、フラゴナールの絵に感情移入できないので、ディドロ説も牽強付会のように思えるばかりで、・・(ただの感想です)

Jean-Honoré Fragonard 018
Jean-Honoré Fragonard: A Young Girl Reading
Jean-Honoré Fragonard (1732–1806) Date circa 1773-1776
Medium oil on canvas
Dimensions Height: 82 cm; Width: 65 cm
Collection National Gallery of Art (en.wikipedia)

幸福そうな「読書する娘」像・・
これ(だけ)は安心して教科書で見ることができる絵でしたね・・・・・・


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