キリスト教では、天使ミカエルが魂の重さを測るてんびんを持ち、
また「ヨハネの黙示録」6章に語られる4騎士のうち3頭目の馬車に乗る[飢饉]は、手に[裁き]のてんびんを持つ。
正義の女神を見てきたのだが、「最後の審判」で神の代理として魂を導きその重さを測るキリスト教の大天使ミカエルも見ておきます。
9~16世紀の「最後の審判」の表現は二つ
一つは山羊から羊を分ける「結果」を示す。
一つは魂の重さを測る「進行中」を示す。
魂の秤の図像の起源は、エジプトの『死者の書』(紀元前4世紀)→正義の女神ページに戻る
「魂の重さを測る」という表現が、実際にキリスト教世界の「最後の審判」に登場するのは、ビザンチンを起源とする。
11世紀ギリシア写本。12世紀のロシアのフレスコ画など。
(『天国と地獄』第二章「最後の審判の図像学」p72‐73(神原正明 2000講談社メチエ)
"Last judgment" polyptyc (1445–1450),
by Van Der Weyden . Oil on oak panel.
Photo taken in the Hôtel-Dieu of Beaune (France)
15‐16世紀を通じてフランドルに咲く「最後の審判」の図像群の中心に君臨している図
(神原p153(『天国と地獄』)
魂の秤量(しょうりょう)は12世紀から14世紀の「最後の輪囲碁の審判」の重要なテーマだった。15世紀以降は忘れ去られてゆくが、ボースの祭壇画は例外的な位置を占める。(神原p72)
寄進者はあの、オータンのニコラ・ロラン(1380‐1461)という。ブルゴーニュ第二の都市、ボーヌに病院複合体「オテル・デュー」(神の家、施療院)を建設し、祭壇画はそこにおかれた。
*hospices-de-beaune.com/ 〇行った方の写真コメント 〇見た方の写真コメント
Hans Memling's Last Judgement, 1467–1471.
National Museum, Gdańsk.
ハンス・メムリンク (1433年頃 –1494 )
The Last Judgment Triptych (central)
1467~1471
パネル(木板)に油彩
寸法 高さ: 221 ㎝;幅: 160 ㎝
ポーランドのグダニスク国立美術館(✳)
(musey.net)
15世紀のロヒールとその書式を写したメムリングの祭壇画・・
虹に腰を掛けたキリストとその真下にいる大天使の構図は同じ。
メムリンクのミカエルは右手に秤、左手に司教杖を持つ。(鎧姿から見て剣に見えたが、剣ではない)
剣はキリストに差し出されている・・・
余談だが、
左翼の天国の門の描写に「身分差別」がはっきり見られるとある。先頭が教皇で続いて枢機卿と司教・・
また、天国の門はゴシック建築で、「奥に古い時代を象徴するロマネスクの柱が意図的に配置されている」(神原p200)
意図?
「羊を右側に、山羊を左側に」(見る側からは逆)
山羊の群れの中から羊を選(よ)り分ける
「早いものは3世紀のローマの石棺のレリーフに見られる表現
(p68)
(平凡社大百科事典第2版1988の図 其の2
by荒俣宏)
(第22卷‐p411)
キリスト教徒の善業と悪業を測りにかける天使ミカエル
悪魔は持ち上がる悪業の頭を助手とともに必死に押さえている
しかし善業のキリスト教徒は天国の鍵を持つペテロに迎えられる
スリゲロード大聖堂中央祭壇画(部分)
13世紀 バルセロナ カタルニャ美術館蔵(Wikipedia)
シャルトルのタンパンの悪の行為の秤にはカエルが乗るという・・図像未確認であるが。
蛙 grenouille
1.蛙は嫌悪感を引き起こす。蛙は悪魔の化身とされてきた。
2.蛙は変態するために、古代の伝承では、誕生、再生、復活のシンボルとされるが、その名残はキリスト教でも見られ、十字架を担おう蛙が描かれることもある。(『キリスト教シンボル事典』)
中世キリスト教ではカエルは死や吝嗇など不浄のシンボルとされたが、死後の世界では魂が水底と地上を循環するという民間伝承を持つドイツでは、水との親和性や冬眠することなどからカエルは人の魂のメタファーとされた。(wikipedia20190902閲覧)
拡大してみたがわからない。
市内にRue de la Grenouillère(カエル通り)がありことはわかった。
おさらい
ゴシック聖堂の着工年代 wikipedia参照
1130頃
(パリ)サン・ドニ大聖堂(レヨナン式ゴシック)
(サンス)サンテティエンヌ大聖堂
12世紀後期
(ノワイヨン)ノートルダム大聖堂
(サンリス)ノートルダム大聖堂
(トゥルネー)ノートルダム大聖堂
サン・ジェルメール・ド・フリ
(パリ)ノートルダム大聖堂=初期ゴシック建築の最高傑作
(シャロン=アン=シャンパーニュ)ノートルダム=アン=ヴォー聖堂
(ランス)サン・レミ大聖堂
*ブルゴーニュにゴシック建築が導入されるのは1170年頃
(ヴェズレー)サント・マドレーヌ大聖堂
(アンジェ)サン・モーリス大聖堂
(1174年イギリス)カンタベリー大聖堂
13世紀
(1210年再建 シャルトル )ノートルダム大聖堂(盛期ゴシックの最高傑作)
(ブールジュ)サン・テティエンヌ大聖堂
(1215オセール)サン・テティエンヌ聖堂
サン=ベニーニュ・ド・ディジョン大聖堂
中世末期15世紀にゴシック建築が復活
フランボワイアン(火焔式)
(モン・サン=ミシェル)大修道院聖堂
(スイス)ベルン大聖堂
16世紀(13世紀の火災後の再建 ボーヴェ)サン・ピエール大聖堂 (以後の建築なし)
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