三叉路のヘカテ

3は聖なる数字で、3相を持つ神々と関連する、と「イメージ・シンボル事典」にあるが、ギリシア神話の図像では特に、3つ組みの女神が目につく。
・・といことでホライ(季節の3女神)のシンボルを見たが、→horai.html
三面神について、ヘカテが挙げられていた。 以下再掲

3(three)

『イメージ・シンボル事典』(大修館書店1984) (p635)

聖なる数字で、3相を持つ神々と関連する。

a.エジプトでは、太陽の3相を表す神は、ホルス(朝)、ラ―(昼)、アトゥム(夜)
また、太女神イシスは、妹-花嫁、母、寡婦(埋葬準備者)の3つに分割された。

b.ギリシア・ローマでは三叉の稲妻を持つゼウスの司る天界、 三叉の鉾を持つポセイドンの司る海、 三つの頭を持つ犬を率いるハデスの司る冥界である。
また、モイラ(宿命)、 復讐の女神達、 美の女神達(豊穣)、ハルピュイア、セイレンなどはそれぞれ3つ組であった。

三つの頭を持つ犬→ケルベロスは別サイトで見た。(唐草図鑑/犬の象徴)

3つ組/三面神

Dea Triforme(三体の女神)

『図説 世界シンボル事典』(八坂書房2000 ハンス・ビーダーマン著)

3つ組/三面神 (独)Dreigestalt、(英)triad

(p415)

3つ組の女神、または3面の女神はとりわけ古代ギリシア・ローマのイメージ世界に頻繁に登場する。 

こした女性像は、ほかならぬ女性の領域から力強い存在が出現して欲しいという気持ちを「表現したものであり、男性神の3つ組より顕著に表れているように思える。

カリステ(美の3女神)、ホライ(季節の3女神)、モイライ(バルカイ、宿命の3女神)、ゴルゴン、グライアイ、そしてエリニュエス(復讐の3女神)あるいはエウメニデス(善意の3女神)などはそうした例であり、また9人の女神からなるムーサは、3つ組を3つ集めたものと理解できる。 

夜と呪法の女神ヘカテは、時代を下るとしばしば3面神としてイメージされるようになったが(※)、これは明確な典拠に基づくものではない。

※三面像というと、ケルベロスと、ティツィアーノの描く、生と賢明の像であったが、本題のヘカテを見ます。

冥府神の一柱であり、その地位はハーデース、ペルセポネーに次ぐと言われる。
後代には、3つの体を持ち、松明を持って地獄の犬を連れており、夜の十字路や三叉路に現れると考えられるようになった 。
眷属として、女神エリーニュスたち(✳)、ランパスたち(✳)やエンプーサ、モルモーといった魔物を従えている(wikipedia201900909閲覧)

  「エリニュエス(復讐の3女神)あるいはエウメニデス(善意の3女神)」とあるが 「Eumenidesエウメニデス」は、「エウノミア」の別記かと思ったが、
(kotobank.jp)では、 ギリシア神話の復讐の女神エリニュスたちの別名。「慈愛の女神たち」の意味。
憤るエリニュエスは市の守護神エウメニデスEumenidesと名を変えてあがめられることになり怒りを収める。

『神の文化史事典』(白水社2013 松村一男ほか編)

ヘカテ 

(p469)

ギガントマキアでは、オリュンポスの神々の見方として参戦。民間信仰でも広く受け入れられた。道辻にあらわれ監視する者として、旅人、商人、盗賊などから信仰された。
夜、冥界、大地とのつながりから、あらゆる妖怪や亡霊を率いるものとなり、呪術や魔法を司る女神となる。

古典古代のイメージ

Pergamonaltarhekate
Pergamon Altar - Gigantomacy frieze - Hekate

Hecate Chiaramonti Inv1922
triple-formed representation of Hecate.
Marble, Roman copy after an original of the Hellenistic period.

Relief triplicate Hekate marble, Hadrian clasicism, Prague Kinsky, NM-H10 4742, 140995
Relief of triplicate Hekate.
Three female figures framed in aedicula, with high poloi on their heads, dressed in chiton and peplos, holding torches in their hands.
Marble (small), Hadrian classicism. NG Prague, Kinský Palace
Ancient Roman art in the Czech Republic
チェコ共和国の古代ローマ美術



ハドリアヌス帝時代のイメージということであるが、
このコロンビア大学のハドリアヌス・ヴィラ発掘プログラムのサイトイメ-ジにも3つ頭の犬が

中世の画像

'Hieroglyphica、sive、De sacris Aegyptiorvm aliarvmqve gentivm literis commentarij' (1575)から
https://amuletofhecate.tumblr.com/
Captive Moon: Amulet of Hecate: Part One
(The Amulet of Hecate Book 1)
by Jane Charlotte



近代の画像

Hecate, Greek goddess of the crossroads by Stéphane Mallarmé
ヘカテー・トリモルポス
Hecate, Greek goddess of the crossroads(1880)

怪物―イメージの解読河出書房新社1991刊
に若桑みどりさんのヘカテ関連の論考がある。

Dea Triforme(三体の女神)と呼ばれる女神にはディアナとヘカテがいる。
ヘカテはギリシア神話の中で、地下と冥界を支配する女神であるところから、ローマ神話の冥界の女神プロセルピーナと同一視されている。

カルタ―リの説明によると、これらの冥界の女王らが三つの首を与えられたのは絶えず変化する『月』の象徴であるからであり、万物に潜む月の力を示すものであるという。(p180)

この月の力とは女性原理の邪悪な側面を指すもので、女性たちの狂気、オブセッション、錯乱(ルナシー)に関係している。
アトリビュート:鍵、鞭、蛇、ナイフ

パウサニアスによるとヘカテの信仰はコリントスにおいて非常に盛んであった。
彼女はメディアやラミアなどの「恐るべき母親」の象徴でもある。
この地獄の女王に三つの頭が与えられたのは、セルウイウスによると、誕生、聖そして死という三つの運命を示すものである。
Cirlotはこれらを、過去、現在、未来の象徴とも考える。この点では、《賢明》の属性と共通する。
だがCirlotはこのヘカテのtriformをヒンドゥー教の三神一体説(trimulti)に類似したものとしている。(p182)


これについては
(唐草図鑑)2019k/kaibutu_image.html
また、
「全集 美術の中の裸婦」(全12巻 集英社 1980年刊)中山公男・高階秀爾監修、 責任編集by若桑みどりの 7巻と8巻が『寓意と象徴の女性像』で、興味深い。
唐草図鑑/2019k/m_wakakuwa.html

Wikipedia
ホーライ:ホーラ季節の三女神
エウノミアー(秩序)、ディケー(正義)、エイレーネー(平和)の三女神



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